『月刊J-Startup』創刊号 注目の税制度に迫る!!

2020.04.08

1.教えて!注目のあの制度!「ストック・オプション税制の適用対象者の拡大」

田原彩香(以下、田原):この番組は「経済産業省」と「バンドオブベンチャーズ」がお送りいたします。さて、本日はスタートアップ支援に関わる税制を担当されている山田さん、そしてJ-Startupサポーターズを担当していらっしゃる稲舟さんのお二人にお越し頂きました。パーソナリティはビジネスタレントの田原が渋谷道玄坂スタジオからお送りします。よろしくお願いします。

まず早速なんですが、稲舟さんから自己紹介をお願いします。

稲舟基久氏(以下、いなちゃん):経済産業省の新規事業創造推進室というところで、J-Startupサポーターズを主に担当しております稲舟と申します。よろしくお願いします。

田原:ありがとうございます。続いて山田さんお願いします。

山田遼太氏(以下、ヤマダマン):同じく新規事業創造推進室でスタートアップ向けの様々な税制など法律・制度を担当しております山田と申します。よろしくお願いします。

田原:ありがとうございます。これからこういった番組でご一緒するということで、まずはお二人のあだ名を決めたいと思うんですが、どうしましょう。山田さんは打ち合わせの時から結構話していて、もう決まっているんですよ!「ヤマダマン」ですよね?

ヤマダマン:はいそうです(笑)所属でもずっとそのように呼ばれているんです。なのでそれで差し支えありません(笑)

田原:そうなんですね!稲舟さんはどうしましょう?

いなちゃん:そのままの流れでイナフネマンですかね?(笑)

ヤマダマン:長くて呼びづらいですね…「いなちゃん」はダメですか?

田原:いなちゃん!いいですね。気に入りました!ではヤマダマンといなちゃんということでお二人よろしくお願いします。

では、早速お伺いしていきたいと思います。最近大注目のあの制度について教えて頂きたいのですが、「あの制度」とはどういったものでしょうか?

ヤマダマン:あの制度とはストック・オプション税制と呼ばれる税制です。大注目のものですので聞いたことのある方もいるかもしれません。

田原:この税制がどうなるんですか?

ヤマダマン:この税制自体は新株予約権にかかる優遇なんですが、これが2019年の7月に大幅に改正されました。それで改めて盛り上がっているという状況になります。

田原:聞いたことはあるんですが、具体的にどういったメリットがあるかなど、詳細がわからないので教えていただきたいです。

ヤマダマン:はい。まずストック・オプション税制そのものに関しては、大きくいうと課税の繰り延べをしようというものです。本来は新株予約権を行使した時には所得税がかかってしまいます。株式を買った時にその株式に対して所得税がかかってしまうということですね。実際はお金を出して株を買っているわけなんですが、そこでお金を出しているのに、またさらに税金を取られてしまうというダブルパンチのような感じになってしまうんです。それをある一定の条件を満たしたストック・オプションについては課税を繰り延べて、その株を誰かに譲渡して売り払う時に譲渡税として税金を徴収するというのが、ざっくりと説明したストック・オプション税制になります。

田原:譲渡税?

いなちゃん:キャッシュが入った時に税金を払えばいいということなので、少し楽になるものですね。

田原:比較的余裕がある時に、税金を払うことができるようになるというものなんですね。これはベンチャーにとってメリットですよね?

ヤマダマン:そうですね。新株予約権はこの価格でいつでも株式を売ってあげるよ、という単なる権利ですので、手元にキャッシュがない企業であっても、その時にはお金を払わなくて良いという意味では、そもそもベンチャー企業に非常に有用な仕組みだということですね。

田原:例えばなかなか給料をいきなりあげることはできないけれども、採用をするときにストック・オプションを発行するなど、そういった採用面で役立ちますよね。

やっぱりストック・オプションは増えているんですか?

ヤマダマン:そうですね。ヒアリングベースではありますが、ベンチャー企業の間ではストック・オプションで給料を支払うというのはいまだに根強いと伺っております。

田原:そして昨年この税制が整ったということで、さらに活用しやすくなるということですよね?

ヤマダマン:そうです。従来は社内の取締役ですとか従業員がこの税制の対象となっていたわけなんですが、現実のベンチャー企業は外部から業務委託契約で色々な方に協力いただくということが多いです。そのため、その現状に合わせてそのような業務委託契約で協力していただく外部の方に付与するストック・オプションについても、税制の対象にしようというのが、今回の改正点になります。

田原:じゃあそれまでは対象ではなかったということなんですね。

業務委託というと例えばアドバイザーの方とかそういう方に発行していても、所得税がかかってしまって大変だったということなんですね。こちらはもう活用できるんですか?

ヤマダマン:左様でございます。2020年現在で、すでに利用することができます。ですが利用にあたっては、従来のストック・オプションと異なる点として、事前に経済産業省に計画を提出をしていただいて認定を頂く必要があります。少し手間がかかってしまうんですが、その申請がすでに受付を開始しているというところです。

田原:これは経済産業省のホームページを見れば書いてありますか?

ヤマダマン:そうですね。様式も載せておりますので、そちらをご参考にしていただければと思います。「社外高度人材に対するストックオプション税制の適用拡大

田原:提出したら、ヤマダマンが確認するわけですね?(笑)

ヤマダマン:そうですね(笑)実際は日本全国に経済産業局という地方局がございますので、そちらで一時的に受付を行うという仕組みになっております。もちろん制度に関するお問い合わせ等はヤマダマンにしていただければと思います。

田原:このお問い合わせはすでに始まっているということですが、実際に何社か来ていますか?

ヤマダマン:そうですね。お問い合わせはほぼ毎日のように来ている状況で、実際にもう申請いただいた企業さんも何社かいらっしゃいます。

田原:じゃあ続々と始まっているんですね。なるほど。ではこれで提出などしなければいけないというのはありますが、ストック・オプションが少し身近になったということですね。

ヤマダマン:そうですね。申請はなるべく簡単なものにしたつもりですので、ご活用いただければと思います。今回広げた範囲である社外の方というのには、要件がいくつかあります。業務委託契約をしている人であれば誰でもいいということではなく、ある程度類型がございます。例えば税理士さんや会計士さんといった国家資格を持っている方や上場企業で役員を務めていらしたという経験がある方ですとか、デザイナーエンジニアプログラマーさんなどの技術者の方で実績がある方などが今回対象になってくるということになります。

田原:なるほど。こういった方に付与する時が対象になるということですね。他には何か条件はありますか?

ヤマダマン:あとは、今回の改正はいわゆるベンチャー企業向けのものになっていますので、ストック・オプションを発行する会社の条件としてはベンチャー企業ということになります。その定義としてはいろんな条件がございますが、概ね設立が10年未満の会社さんであって、大規模法人のグループに属していない、世間的にベンチャー企業と呼ばれるような会社さんであれば、ご利用いただける可能性がございますのでぜひお調べいただきたいなと思います。

田原:いわゆるまだ上場していない、これから頑張って行くぞという企業ということですね。なるほど、ありがとうございます。もしもっとわからないことがありましたら、ヤマダマンにお問い合わせいただけたらと思います。

ヤマダマン:よろしくお願いします。

2.日本経済の発展を後押し!「オープンイノベーション促進税制」

田原:では続いてオープンイノベーション促進税制についてお話いただきたいと思うんですが、こちら私全然よくわかっていないので教えてください。

ヤマダマン:こちらはですね、その名の通りなんですが、簡単にいうとベンチャー企業を支援するために、ベンチャー企業と大企業などの事業会社さんがオープンイノベーションすることで税が軽減されるというものです。

田原:オープンイノベーションって本当によく聞くんですけど、どういうことなんですか?

ヤマダマン:非常に概念的な話をすると、日本の特に大企業はヒト・モノ・カネを豊富にお持ちなので、それをベンチャー企業に分けてもらいたいなということです。これは大企業さんがベンチャー企業さんに対して恵んであげるというような話ではありません。大企業では組織が硬直化してしまって、イノベーションが組織の中からは起きにくいと言われていて、自分の中でなんとかしようとするけれどなかなかにイノベーションが進まないという状況があります。その点、産業省でもベンチャー企業がイノベーションにおける起爆剤であると考えています。そのため、イノベーションのタネというものを外のベンチャー企業から持ってこようというものが、概念的に説明するとオープンイノベーションになります。

田原:そうですよね。大企業とベンチャー企業それぞれいいところや苦手なところがあるので、そのいいところを持ち寄って、一番いい状態にしていこうということですよね。

いなちゃん:本来的なオープンイノベーションだと、日本と対海外、日本の大企業と海外のスタートアップとの繋がりのことをいうらしいんですが、その点でいうとオープンイノベーション税制では海外のスタートアップへの投資も一応対象となっています。ただし基本は国内を見た政策となっています。

田原:なるほど。日本の経済を発展させようというものですね。

ヤマダマン:ベンチャー企業に対して資金供給を加速させることで、日本の経済を成長させていこうじゃないかという発想でできた税制ですね。

田原:ということは、オープンイノベーションとなったら税制のメリットが受けられるということだと思うのですが、具体的にどんなメリットがあるんですか?

ヤマダマン:ベンチャー企業に対して、事業会社さんが単なる投資ではなくてオープンイノベーションを目的として1件1億円以上の出資を行なった事業者については、法人税の25%の所得控除を講じるという仕組みになっています。

田原:これは軽減されるのは大企業ですか?

ヤマダマン:そうですね。実はこれは出資する側の企業が少しお得になるというものになります。

田原:ベンチャー側には何かないのですか?

ヤマダマン:直接的に利益を得るのは今回の制度は大企業となっているんですが、例えばベンチャー企業の効果としては「今このような税制がありますので、大企業さんにとってもお得ですよ」といったように、この制度をある種のプロモーションに使っていただけるのではないかと考えています。

田原:こういう制度があると、これまでなかなかベンチャー企業と協力したりとか出資したりとかを考えていなかった大企業も、やってみるきっかけになりますよね。

ヤマダマン:まさにそうなんです。今までそういうオープンイノベーションとか投資とかに興味がなかった会社にも興味を持っていただいて、貯まったお金を外に吐き出させるというのが大きな目的であります。先ほど1件あたり1億円以上と申し上げたんですが、いわゆる中小企業社様の場合は、1件あたり1,000万円以上からが税制の対象になってきます。なので今までオープンイノベーションなんて大企業だけでしょと思っていたような中小企業の方にも、オープンイノベーションに興味を持っていただくきっかけとなるという意味でも有用な制度なのではないかなと思います。

田原:1,000万円となると、結構ハードル下がりますもんね。

ヤマダマン:そうですね。1億に比べればだいぶ下がってきますね。

田原:これは中小企業の定義というのは特に決められてはないんですか?

ヤマダマン:それは一般的な法律上の定めに従ってという感じですね。また、実はこの制度は令和2年4月から令和3年度末までの時限立法となっております。

田原:期間限定ということですね。

ヤマダマン:そうですね。詳しいことはまた4月以降に明らかになります。

いなちゃん:出資って儲かる可能性もあるじゃないですか。なので今までの従来の制度だと、そういうものに対して税制優遇するとは何事だという風潮があったんです。でもそんなことを言っていたって日本の経済は発展しないでしょという考えが広がっているところもあるので、かなり画期的な制度になるのではないかなと思います。

ヤマダマン:そうですね、そう思います。もう一つ画期的というか利用する人にとってメリットとなる点がございまして、実はこれは事前の認定が必要ないという点でございます。このようなものはよく、計画を出せとか認定を受けろとか言いがちなんですが、この制度は毎決算期にオープンイノベーションの取り組みについて今こういう状況ですというのを、事後的に報告していただくだけで利用可能となっております。なので手続き的にはだいぶハードルが下がっているんじゃないかなと思います。

田原:それは画期的ですね。これはみなさんオープンイノベーションしたほうがいいじゃないですか!

ヤマダマン:そうですね。まさにそうなりますね。

田原:そうなんですね。これは4月から施行ということですので、今日はまだ予告という感じでしたが、また引き続き情報とかを教えていただきたいなと思います。

ヤマダマン:はい、ぜひよろしくお願いします。

経済産業関係 令和2年度(2020年度)税制改正のポイント

田原:さて、本日お越しいただきましたのは経済産業省の山田さん、稲舟さんのお二人でした。パーソナリティはビジネスタレントの田原がお送りしました。ありがとうございました。