あるべき世界の実現を目指す起業家のパートナーになりたい

2019.11.27

学生時代に、インド日系スタートアップで不動産事業の立ち上げメンバーとして、Webサイトの開発・営業を経験。その後、教育系スタートアップQuipperにて学習コンテンツ開発マネージャー及びインドのテクノロジーメディア“YourStory”の日本向けサイトの立ち上げなどに従事。2015年10月より、インドのバンガロールに約1年半常駐し、インド市場のマーケット・リサーチやスタートアップのインド進出を支援。2017年4月から株式会社ジェネシア・ベンチャーズに参画し、日本・東南アジアで20社以上のスタートアップへの投資実行を担当。

アジアの起業家のパートナーとして、社会的インパクトの創出に挑戦したい

(株)ジェネシア・ベンチャーズに、入られたいきさつを教えてください。

大学3年生頃から、合計で3年間ほどインドにおり、現地での起業に向けていくつかのスタートアップで働いたり、マーケットリサーチをしながら事業アイデアを探していました。インドで起業しようと思った理由は、マーケットの成長性と優秀な人材の豊富さ、機会の格差が大きく、社会課題解決のインパクトが大きい国だと思ったからです。

その頃にいくつかのVCでも働かせて頂いた時期があったのですが、若く優秀なインド人起業家たちと話す中で、自分と彼らの目指している世界に大きな違いはないことに気づきました。それから「起業家として彼らと競争するよりも、彼らのチームの一員として同じビジョンの実現に向けて挑戦していきたい。」と考えるようになりました。

日本は戦後に年間経済成長率10%前後の高度経済成長を経て、アジアを代表する国となりましたが、バブル崩壊後は長期停滞期に入りました。ただ、それでも日本はいまだに世界3位の経済大国です。アジアの時代と呼ばれる21世紀ではアジアから多くの起業家が生まれ、社会変革に挑戦していきます。日本人としてこの時代に生まれたのであれば、アジアの起業家たちやアジアで挑戦する日本人起業家たちのパートナーとして貢献していきたいと考えたのが、VCを志したきっかけです。ちょうどそんなときに、ジェネシア・ベンチャーズの田島と出会い、「アジアで持続可能な産業がうまれるプラットフォームをつくる」というミッションに強く共感し、第一号社員として入社しました。

自分だったらどんな人に仕事を任せたいか

入られてからはどうでしたか?

入社当初は、メンバーが田島と私の2人しかおらず、リソースが不足している中で様々な業務を遂行しなければならず、正直かなりキツかったです(笑)。ディールソーシングやリサーチ業務はインド時代に経験していたのですが、実際の投資実行実務や投資後支援は未経験でした。ただ、当時歯を食いしばって頑張ったことが今の自分の糧となっています。

2017年4月に入社すると、さっそく田島とベトナム・インドネシア出張に行きました。田島のサポートのもと投資検討を進め、ベトナムで2社、インドネシアで1社のスタートアップへ投資実行しました。あれから2年半ほど経ちましたが、現在その3社は順調に事業拡大しています。

田島からは「自分だったらどんな人に仕事を任せたいか、どんな人と一緒に働きたいか。」を常に意識するようにとよく言われました。また、VC業務は、マルチタスクになりがちですが、タスクマネジメントの基礎を叩き込んでもらえたのは有り難かったです。初めての上司が田島でとても運が良かったなと思います。

資本関係の前に友達になりたい。自分が相手に何をGiveできるか?

投資にいたるまでのプロセスで何か意識されていることはありますか。

そうですね。VCになってから、ソーシングのためにイベントに参加したりもしてきましたが、結果として私の場合は、友だちの会社に出資させて頂くことが多いです。起業家とVCの関係はよく結婚に例えられることがありますが、お互いをよく知るという意味でも資金調達前、場合によっては起業前のタイミングから声をかけてもらえると嬉しいなと思っています。

アジアの起業家の場合は国際結婚になるので、難易度は高くなると思うのですが、世代が近いと国籍が異なっていても思想は思ったほど変わらないので、東南アジアでも同世代の友達を増やしていきたいと思っています。出資関係にならなかったとしても友達の成功は応援したいですし、私に何かできることがあればいつでも声をかけてほしいです。

他に意識していることとしては、起業家の方とお会いする際は「相手に何をGiveできるのか?」を自分に問いかけるようにしています。例えば、インドネシアの起業家なら、日本・インド・中国・アメリカなどの国の成功モデルからのアナロジーや次回ラウンド以降の投資家の目線感など、まだまだですが試行錯誤しながら自分からGiveできることを探しています。この点はもっと精進していかねばと思っています。

より多くの日系企業や日本人起業家のアジアでの挑戦を応援したい

現在拠点とされているジャカルタって、どういう企業が発展してるんですか。

インドネシアにはトコペディア、ブカラパック、ゴジェック、トラベロカの4社のユニコーン企業があります。eコマースではトコペディアとブカラパックが大きく成長しています。トコペディアは、弊社General Partnerの鈴木が前職のサイバーエージェント・キャピタル(旧サイバーエージェント・ベンチャーズ)で投資を担当しており、その後ソフトバンクやアリババからの出資を受けて、企業価値は70億ドル(約7900億円)となっています。ゴジェックはバイク版Uberとして成長してきましたが、現在はライドシェアだけではなく、決済やデリバリーサービスなどを提供してスーパーアプリ化を目指しています。トラベロカはエクスペディアの東南アジア版のような会社で、インドネシアから東南アジア全域に展開しています。

今現地で注目を集めているマーケットとしては、フィンテック、ヘルスケア、不動産、飲食、小売、教育、物流、旅行などです。これからの5-10年でこれらの分野から複数のユニコーン企業が生まれてくると思っています。

3年前までインドにいたので、インドとインドネシアを比較して考えることが多いのですが、インドと比べてインドネシアは親日で、日本のプレゼンスは相対的に高いと感じています。インドも親日国ですが、起業家に「日本のVCです。」と話すと、「お前はソフトバンクと繋がっているのか?」と聞かれるくらいで、あまり日本について知らない人が多かったですが、インドネシアでは地理的に近いのはもちろん、食文化や歴史、自動車やインフラ投資など関係性が深い分話題も多いですね。日本が好きだと話してくれる人も多いので、その期待に応えたいという気持ちも強くなります。

もちろんインドも大きなポテンシャルのある国であり、個人的にも思い入れがあるので、インドスタートアップへの投資も強化していきたいと思っています。最近は東南アジアで起業するインド人起業家も増えてきており、実は私たちの東南アジア投資先のうち、2社はインド人が創業者です。

最近感じている危機感として、親日のインドネシアでも日本のプレゼンスが相対的に低下してきていることがあります。最近はセコイア・キャピタルやアクセルパートナーズなどのグローバルベンチャーキャピタルのインドファンドが東南アジア投資を強化しています。また、東南アジアのスタートアップエコシステムに関してよく議論となるポイントとして、新興株式市場の未整備により、ExitがM&A中心となっていることがありますが、近年アリババやテンセントなどの中国大手IT企業による東南アジアスタートアップの買収が増加しており、それと連動して中国VCも影響力を強めています。

個人的には親日で成長ポテンシャルの高い東南アジアで事業展開される日系企業や日本人スタートアップがより増えてほしいと思っています。最近は日本人の方が東南アジアで起業するケースが増えており、AnymindやOmiseは有名です。私たちの出資先でベトナムで飲食店向けBtoB仕入れプラットフォームを展開するKAMEREOも日本人起業家によって創業されています。

壊れた世界を修復し、あるべき世界を実現する人たちと一緒に挑戦したい

投資するときには、会社のどの部分を重視されていますか。

チーム・マーケット・戦略の優先順位です。チームに関しては、狙うマーケットやビジネスモデルによって重要な要素は変わってきますが、共通する部分で言うと、「事業領域について誰よりも深く理解しているか」と「適切な人を巻き込んでいけるか」です。

「失敗しても心から納得できるか」、言い方を変えると、チームを心から尊敬でき、その会社で働きたいと思うかどうかを考えることが多いです。素晴らしいチームが大きなマーケットに対して、緻密な戦略を描いているスタートアップを応援させて頂きたいです。

個人的なテーマとしては「壊れた世界を修復し、あるべき世界を実現する人たちと一緒に挑戦したい」と思っています。

人類は歴史の中で、試行錯誤を繰り返しながら社会を発展させてきましたが、僕たちが100年前の世界を戦争や差別、貧困問題などの多くの点から不完全な世界だと感じるように、50年後、100年後の人々が現代を見たときにも、人々の生活や仕事、社会システムは不完全で壊れているように見えると思っています。

熱意を持つ人々が、テクノロジーや資本の力を活用して課題を解決することで、その差分を埋め、あるべき世界を創り出すことが社会的インパクトだと思っています。50年後、100年後のあるべき世界の創造にチャレンジするスタートアップのチームの一員として貢献させて頂けるよう、自分自身更に精進していきます。

最後に、アジアに挑戦したい起業家の方やこれから起業を予定されているみなさん、是非TwitterやFacebookなどからご連絡ください!