起業家は、地図を持って歩け! コミュニティが生み出す成功の連鎖反応とは。

2019.12.18

2018年1月に「既存産業×テクノロジーで新規事業を創出する」をコンセプトとしたXTech(クロステック)を設立。同社を設立後まもなく、老舗インターネット企業「エキサイト」に対するTOBを実施し、大きな注目を集めた。その後も2〜3ヶ月に1社のペースで様々な業種の子会社の設立、M&Aを手掛けている。

現在はXTechの代表を務めるとともに、 XTech Venturesでは創業者ジェネラルパートナーとして活躍をしている。今回のインタビューでは、経営者としても、投資家としても手腕を発揮し、数多のトラックレコードを残してきた西條さんの投資家としての素顔に迫った。

ミドル層起業家が増えない課題感からXTech Ventures設立へ

−現在XTechの代表を務める西條さんですが、XTech Venturesを立ち上げた経緯について教えてください。

まず、XTechという会社について説明をさせていただくと、XTech自体は持株会社の形態をとっています。持株会社として、新規事業を生み出していくための仕組みを持った企業群の形成を目指しており、「スタートアップスタジオ」というコンセプトを掲げています。このコンセプトの基で一番初めに設立したのがXTech Venturesというベンチャーキャピタルです。

XTech Ventures設立の背景には、長きに渡り在籍したサイバーエージェントを退職し、伊佐山さんと松本さんと共同で設立したベンチャーキャピタルWiLでの経験があります。WiLでは、投資家として数多くのスタートアップ起業家と仕事をさせていただきました。その中で、若手起業家がここ数年で急増している一方で、ミドル層の起業家が育っていない状況に課題を感じました。社会経験が豊富で、起業できる力のあるミドル層の人材が起業という選択をしない現状があったのです。私は、ミドル層の優秀な人材が起業をすれば、事業の成功確率は高くなるだろうと考えていたので、この現状に対してもったいないという思いを抱いていました。

このような経緯から、ミドル層の起業家をサポートことをコンセプトにXTech Venturesの設立に至ります。実際、私の投資ポートフォリオの6、7割は30代から40代の起業家で構成されていますね。

培ってきたネットワークを活用した独自のルート

−「経営者」と「投資家」の2軸で活躍をされていますが、投資家としてのパフォーマンスはどのように維持されているのでしょうか。

現在は、業務全体の中で投資家としての業務に割ける時間は25%から30%程度ですね。ただ、私の場合は資金調達を目的とした起業家とミーティングをすることは稀で、事業の相談から投資に繋がるケースがほとんどです。

「次の事業の柱になるような新規事業を作るには、どうアプローチしたらよいのか?」、「100人を超える組織はどうマネジメントをすればよいのか?」など、様々な経営課題の相談がきます。そういった相談に対して、私自身の経験を基にアドバイスし、その過程でお互いのニーズがマッチする場合は、投資に繋がります。ですから、純粋なVCとは性質が異なる部分が多いと思います。

また、これまでに培ってきたネットワークを基に、信頼のおけるルートから紹介してもらうことが多いため、ある程度スクリーニングされた案件に対して投資検討をすることができています。VCは投資案件がどういうルートで入ってくるかが重要となり、独自に案件を獲得できることが強みになります。このようにファインディング(投資先を探す活動)の時間を短縮できていますので、フルタイムで投資活動をしなくてもパフォーマンスを維持できているのです。

コミュニティに属し、地図を持って歩ける起業家であるか

−これまでに数多くのスタートアップを見てきたご経験から、投資判断の際に重要視しているポイントはありますか。

投資判断の際に重要視しているポイントは、スタートアップの企業フェーズによって変わります。シードのスタートアップ企業への投資であれば、確認すべきポイントは「起業家」と「チーム」の2つだけです。中でも特に、「起業家」に関しては重要視していますね。その一方で、アーリーではプロダクトがマーケットにフィットしているか、マーケティングのアクセルを踏むべきタイミング、ミドルでは事業計画の詳細なシミュレーションや、IPOに向けた内部体制の確立など確認しておかなくてはならないポイントも多くなります。

「起業家」の部分に関して、もう少し具体的な話をすると、「起業家がどのようなコミュニティに属しているのか」を重要視しています。優秀な起業家が所属するコミュニティでは、そのコミュニティの中でひとりがIPOなどでエグジットをすると、ひとり、またひとりと連鎖反応を起こして続いていきます。海外ではPayPalマフィアが有名ですが、日本にもWIREDで特集されたコミュニティをはじめ、世代ごとに優秀な起業家が多数在籍するコミュニティがあります。

実際に、 WIREDで特集されたコミュニティに所属する方々は、投資家や起業家として目覚ましい活躍をしています。当然コミュニティ内では有益な情報やノウハウが共有されるので、このようなコミュニティに所属しているのか否かで、地図を持って歩いているのか、何も持たずに闇雲に歩いているのかともいえるほど大きな差が生まれます。ですから、私の場合は常日頃から注目するコミュニティの動向を観察して、そこに所属している人が相談に来たら投資を決定することが多いですね。

後編に続く