時代の変化を嗅ぎ分ける嗅覚はあるか 福岡発のエコシステムでイノベーションを(後編)

2020.02.28

早稲田大学在学中に起業家へのインタビュー記事を掲載するメディアを立ち上げ、そのインタビューが縁で、2011年にはサムライインキュベートへ⼊社。前編に続き、現在は2016年にベンチャーキャピタルF Venturesを設⽴し、福岡を拠点として累計30社超に投資をしている両⾓将太さんの素顔に迫った。

体当たりでつかんだ約2億円の1号ファンド

思い切りがいいですよね。そこから順調に進んでいったのですか

すぐに法務局で登記をして、金融庁の財務局に登録・届出を出しました。そしてLPを集めていきました。

1号ファンドは2億円くらいの小さなファンドです。500万円くらいから小口でどんどん集めて26社に投資しました。今は2号ファンドを作っていて、現時点で5億円ほど集まっています。さらに5億円ほど集めようと考えています。

辛かった時期はありましたか。それは、どう乗り越えたのでしょうか

1号ファンドの立ち上げ時期は辛かったですね。

投資家はVCを運営するGPの実績を見てファンド出資するかどうかの判断をしますが、初めてファンドを立ち上げる僕にはその実績があるはずもありません。なかなか信用してもらえずに苦戦しました。僕自身を信用してもらうしか、投資の意思を固めていただく方法がないわけです。つまり、「投資を見送られた=僕自身が信用されていない」ということなので、その積み重ねがボディーブローのように効いてきて精神的にダメージを受ける辛い時期でした。

でも、当たっていくしかないので、当たって、当たって、ようやく2億円ほど集めました。「信用されるようになるまでは、この方法で実績を出すしかない」と割り切るようになりました。

人からの紹介をうまく活用したり、サムライインキュベートでの実績について話せる範囲で話したりすることで、少しずつ信用されるようになってきました。

ファンドは、3回クローズがあるのですが、1回目の募集が終わった時点で投資をスタートできるんです。ですから、そこで少しずついい案件に投資をして、セカンドクローズ、サードクローズでは、その投資した案件を見せながら出資を集めていきました。

最初の株主として投資させていただいたスキマバイトのタイミーさんはうまくいっていますね。投資させて頂いてからまだ2年も経っていないくらいですが、すごい成長率です。

タイミーさんはどうやって見つけたのですか

インターンからの紹介です。

僕らの戦略として、インターンを常に10人以上は雇うようにしています。インターンの採用ができなかったり、育成を面倒に感じたりする方は多いみたいですが、僕は育てるのが好きなんですよ。

東京と福岡で年2回ずつ開催している「TORYUMON」というイベントは、それぞれ40人のスタッフに手伝ってもらっています。そのスタッフの中からインターン希望者がきてくれるので採用に困ることもありません。投資先のインターン採用支援にもなっています。

彼らに色々なイベントに行ってもらったり、イベントを主催してもらったりしながら、起業家とのコミュニティを作っています。また、インターンを経験後、起業も推奨しているので、過去のインターン自身が起業家になり、コミュニティ形成の一端を担っています。

また、そのコミュニティは起業家にとって効果が得られるものとなるよう心がけています。様々なスタートアップ支援者がコミュニティを作っている中で、起業家はどのコミュニティに所属するか自由に選べます。それぞれのコミュニティにおいて、このエコシステムに入れば起業仲間やCXOクラスの人、そして投資家を見つけやすいなどのメリットがあります。黎明期と比べ、ずいぶん起業しやすい環境になったと感じています。

福岡はポテンシャルが高い場所

福岡以外の企業にも投資をされるのでしょうか

はい、よく勘違いされるのですが、福岡がメインというだけで東京の企業にも投資をしています。例えば、タイミーのように成長してから福岡拠点をつくったり、福岡で実証実験をしたりしている会社もあります。

好きな業種や領域はありますか

コンシューマー向けのサービス、自分がユーザーになれる領域です。

最近、投資したいと思っているのが再配達をなくすという物流系の会社です。自分自身が課題に思っていることを解決してくれるシンプルなコンシューマー向けサービスが好きですね。

好きな起業家のタイプを教えてください。

巻き込み力がある人に投資したいですね。例えば、eスポーツのRATELというスタートアップがあるのですが、彼らは発信すると仲間が自然と集まってくるような巻き込み力のある会社なんです。巻き込めるということは、その源泉に熱意や、盛り上がる領域の芯をつける嗅覚があると思います。

また、波に乗れる起業家も好きですね。例えば、最近でいうと、ブロックチェーンは突然大きくなった波ですよね。波が来た時に波に乗れるって当たり前のようで難しい。乗り遅れた瞬間にチャンスが遠ざかってしまいます。失敗を怖がらずに波に乗れるということは、それだけ情報収集していてアンテナが高くないといけないんです。

ちなみに、僕も波に乗っていこうとするタイプです。もっと言うと、波を起こす側に回りたいです。後先考えずに動くところが自分のいいところだと思っているし、そうでないとチャンスはつかめないと考えているんですよね。

あとは、ポジティブな方がいいですね。その方のTwitterを見て、ネガティブなことをつぶやいていたら投資はしません。

対象は若い起業家の方が多いでしょうか

「TORYUMON」を開催していることもありますし、SNSで発信するのも若い方なので、僕の投資先は若い人だけに思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

ただ、若い人にしか見えない事業領域はあると思っています。例えば、Zenly(ゼンリー)やInstagramのストーリーなどは若い人ならではのサービスではないでしょうか。新しいプラットフォームが出てきたときに、すかさず事業を立ち上げられるか、が若い起業家にとって重要なポイントだと思っています。タイミーも、スマホがこれだけ普及し、さらにそれを学生でも当たり前に持つようになりました。スマホを1人1台持つようになり、バイトが欲しい人とバイトしたい人が直接繋がれるようになったタイミングで、先行優位性を効かせ、ユーザー数を伸ばしています。そういう先行優位性が効きそうな若い人ならではのサービスを創っている方に興味があります。

逆に、その業界のベテランの方にも関心を持っています。海外ではイノベーションが起きているのに、日本では起きていないという領域がありますよね。Uberもその一つかもしれません。規制は大事ですが、時代に合わない規制があることも事実です。昔からの規制を取っ払って、時代にあったイノベーションを起こすことができるのは、その業界の課題を一次情報として肌で理解しているベテランの方だと思っています。

最後に起業家へメッセージをお願いします。

福岡の創業期スタートアップの伴走者として、起業家と二人三脚でアイデア段階からでも、事業の創造を支援していければと思います。特に、福岡には、規制緩和や実証実験をやりやすい土壌があります。民間も行政もいろんな支援をしてくれます。そういう意味で福岡はポテンシャルが高い場所だと考えています。ですから、創業期の起業家の皆様、起業を考えている方も是非ご連絡いただければと思います。