地方に眠る最高の資産を掘り起こす VC × 大学で挑む未来への挑戦

2019.12.04

QBキャピタルの代表パートナーの本藤孝さん。アメリカの大学を卒業後、アクセンチュア、NIF、フィンテックグローバルキャピタルなどを経て、2015年からQBキャピタルの代表としてスタートアップの支援を行っている。彼が支援するスタートアップ企業と、支援先の選び方など、詳しく話をうかがった

九州の大学関連ファンドのアイデアを持っている人との出会いがファンド参画のきっかけに

―現在は福岡と東京の2つを拠点に生活しているのですね。なぜ福岡をもう一つの拠点として選んだのでしょうか?

ベンチャーキャピタルって、一人で立ち上げることはほとんどなくて、たいていは誰かとパートナーシップを組んで始めるんですけど、次のステップを考えていた時にお話させていただいた中で、ファンドのコンセプトに共感でき一緒にやっていこうと思える人に出会えたのがきっかけでした。

また、webやアプリ系の開発だと東京が優位なことが多い現状があると思うんですけど、大学の技術に関してはちょっと事情が変わってきます。というのも、大学の先生はどこかのポジションが空くとそこに応募して受かったらそちらに引っ越すのです。首都圏の先生でもポジションをステップアップしたりするために地方の大学に行くことはよくある話で、地方にも高い技術をもった先生がいらっしゃいます。その高い技術をもとにスタートアップを始められる状態が、まだ手つかずで残っているのです。

―本藤さんご自身は九州には特にゆかりはないですよね。

はい。一緒に代表を勤める私のパートナーは、九州大学を卒業してから九大の知的財産本部でベンチャー支援、九大の産学連携機構九州の代表取締役などを歴任していたので、大学の内情をよくわかっています。これが投資先を決める上で大変重要なんですよ。

東京に拠点があることも結構重要で、地方の会社でも実は取締役会だけは東京で行われることが非常に多いんです。というのも、ベンチャーキャピタリストが取締役会に出席するためだけに地方に行くのは負担が大きいから。国内のベンチャーキャピタリストの7,8割は東京近辺にいるので、特に大きな金額を集める必要があればあるほど、要は会社が成長してステージが上れば上がるほど、東京から資金調達をする必要が出てきて、そうすると最終的には東京で取締役会が開かれることになります。

―本藤さんはアクセンチュアを退職後、NIFベンチャーズ(現:大和企業投資)に転職し、独立を果たしています。独立するとき、どのようにして意思を固めましたか?

その当時勤めていたNIFベンチャーズって、最初は未上場でその後上場して合併しているんですけど、そのときに企業の方針として海外への新規投資を積極的に進めづらい状況になりました。でも海外への投資はピークのときでNIFの4割くらい。そこにウエイトを置いて投資していたので、独立を意識しましたね。その後しばらくしてフィンテックグローバルという会社に出会い、フィンテックグローバルというブランドは共有しながら、独立性を担保してフィンテックグローバルキャピタルを設立しました。

―投資先はどのように紹介してもらっているのですか?支社や本社が福岡にあるなど、こだわりはありますか?

投資先は通常のベンチャーキャピタルと同じで、人からの紹介がベースです。九州の大学発をメインの投資テーマにおいていますので、九州にこだわってはいますが、案件ベースで考えたりもします。実際、本社が北海道、東京、山梨、鳥取、など九州以外のところもあります。

基本的には九州になんらかの関係がありますが。せっかくご縁をいただいた九州にいろいろなことをしたいと同時に、ほかの地方でも同様に支援をしていきたいと思っています。

意外な会社と共同投資、CTOを兼務していたことも

―20年間で一番苦労した思い出はありますか?

ベンチャーキャピタリストって、黒子だと思っています。投資先のCEOが一番大変だと思うので、僕としては大変だと思うことってあまりないんですよね。

ただ、フィンテックグローバルキャピタルのとき、ある投資先のCTO職が突然不在になってしまったんですよ。その時、その会社の社長が僕に「CTOをやってくれないか」って声をかけてきたんです。その社長の発想に僕もびっくりしましたよ。当時は午前中にベンチャーキャピタリストとして仕事をして、昼間にどちらかの会社でお昼ご飯を食べ、午後からはその会社のCTOの仕事をしていて、その時がやはり大変でしたね。CTOの仕事といっても、実際はプロジェクトマネージメントだったんですけど、夜中まで投資先のスタートアップの人たちと仕事して、翌朝またベンチャーキャピタリストの仕事というサイクルで楽しかったけど、その時期はやっぱり投資が思うようには進まなかったのでもうやりたくないですね。

投資先を見極める秘訣は「女性の意見」

―スタートアップ企業はそういったトラブルはどこにでもあるのでしょうか。投資するうえでそうした会社の信頼性を見極めることはできますか?

そうですね。みんな言わないだけでトラブルはどこにでもあります。本当は投資する前から見極められればいいのですが、それが難しいのが現実です。

ある時期、自分がこういう人だなって思った人が全然違うことを始めたことがあって、どうやって人を見極めたらいいのだろうと悩んだ時期がありました。ヘッドハンターなら一番人を見ているだろうと思って、こちらからヘッドハンターに連絡してネットワークを築いていたので、どうやって人を見極めたらいいのか、いろんな人に話を聞いてみました。

そして、あるヘッドハンターから「面接に女性を入れるといいですよ」と言われました。男性とは違う目線で違うところを見るらしいのです。その人は必ず秘書の女性と面接すると言っていましたね。なんとなく雰囲気が違うとか、なんとなくあの人はダメっていうのがそういう直感を聞いた方がいいということで、実際に僕も起業家との面接に女性も同席してもらったりしたことがあります。実際、「話はわからないけど、あの人はよさそうですね」とか「あの人はうそをつかなそうな感じがしました」なんていう意見を聞けるので参考になりましたね。

日本と海外のスタートアップの違いとは

―やはりはじめは人を見て投資するのですね。

そうですね。海外はどちらかというとチームができているからチームを見るのですが、日本はまだチームというよりは個人を見ていることが多いですね。もちろん、チームとしてできている会社が以前に比べると増えてきてはいると思いますが、特に地方は起業する本人はすごいけど、それ以外の人材が不足しているケースもあり、そこは現状の課題だと思いますね。ただ、これは時間はかかりますが、エコシステムができてくれば解決できる問題だと思っています。

あと、国にもよりますが海外ははじめから国外への事業拡大を視野に入れなければいけないという事情があることがあるんですよ。例えば、イスラエルは自国のマーケットが900万人と少ないので、はじめからグローバルで勝つ仕組みをつくろうとしています。日本は起業しようとしたらまずは日本のマーケットで勝ち、実績を積んでから海外に行きますが、それじゃ遅い場合があるんですよね。もちろんそれで十分という場合もありますが、スタートアップによっては、最初から海外のマーケットも視野に入れる必要があると思います。

地方大学の資産を掘り起こす

―本藤さんの今後の目標や展望についてお聞かせください。

ベンチャーキャピタリスト側にも大学発のスタートアップに関するノウハウもたまってきています。これまでにも大学発スタートアップの成功例から失敗例まで、さまざまな事例を見てきたので、資金面だけでなく、そうしたノウハウも伝えていきたいです。

そして今後は九州に限らず、まだまだ地方の大学でいいシーズが眠っていると思うので、そこは掘り起こしていきたいと思っています。