防衛大出身の投資家へ(後編)
防衛大学校を卒業後、自衛官ではなく朝日放送株式会社(現朝日放送テレビ)へ入社。2015年にABC DREAM VENTURESに参画したことをきっかけに投資の世界へ。自分たちが持ち得ていないサービスや事業を提供する企業を支援している。投資の傾向としては、日本をより良くしようとする企業に積極的に投資をしている。
前編に引き続き、異色のキャリアを持つ白井さんの投資家としての素顔に迫る。
目次
組織の動き方が、その先の伸び具合を左右する
−これまで数多くのベンチャー投資を実行してきた白井さんが、投資判断の際に企業の重要視するところについて教えてください。
様々な観点から出資を希望されるスタートアップを見るのですが、CVCにおける投資で、クリアすべき条件が2つあると思っています。一つ目は、投資から生まれるキャピタルゲイン、そして二つ目は、会社を大きく成長させる事業創出の可能性です。これを一定程度クリア出来るかが、投資判断基準となります。
これとは別に、私がよく見ているのは、社長の組織に対する考え方です。組織戦は平均点が勝負のポイントとなります。ある仕事では点数の悪い人も、違う仕事では変わる可能性があります。それをどう生かして、組織力を引き上げていけるか考えられる経営者の方には、非常に魅力と可能性を感じます。
−白井さんの投資傾向を、教えてください。
私たちABCドリームベンチャーズが支援させていただいている投資先の傾向としては、自分たちには出来ない、もしくは私たちがやっても非常に時間がかかることを短期間で出来る企業が多いです。これだけ変化が速い時代で、自分たちだけで作り出すことにこだわっていると置いていかれてしまいます。
−投資する際に活きた経験などは、ありますか。
私は放送業局で働いていますので、放送業界の人間のことが良く分かるのですが、放送業界の人たちはパイオニア精神に溢れた人の集団です。
優れた放送人は、自分たちで波を作っていきます。そういう点はベンチャーと似ています。実は、日本で初めて富士山の上から中継したのは当社であり、その他にも数々の独創的な番組やイベントなどを世に送り出してきました。私は、まさに生まれつきのイノベーター集団だと思っています。この会社のカルチャーで育った経験は、投資に際して非常に役立っております。
兵士を増やして業界を歩いて行きたい
−将来的には、どのように活動していきたいですか。
今後は、ABC DREAM VENTURESの活動へ当社グループのメンバーに一人でも多く関わってもらい、ベンチャー企業を理解してもらえるように、橋渡しの役割が出来ればと考えています。
ですので、仲間を増やして一緒に業界を歩き回り、ABC DREAM VENTURESとして、もっと積極的に投資をしていければ良いと考えています。ですから、投資の一連の業務を担えるような、自己完結能力に優れた強い兵士の方にジョインしていただけると心強いですね。
兵法は投資の業界にも通ずる
−白井さんの座右の銘は、「兵者詭道也」と書かれてましたが、投資とどう結びついていますか。
「兵者詭道也」とは孫子の兵法の言葉で、戦争は騙し合いで、状況いかんでは当初の作戦を変更して勝利をおさめることが出来るという意味です。人は固定観念に囚われて生きていますが、局面に応じて物事の視点を変えてみることで、本来の目的を達成することが大事だと考えています。当社とベンチャー企業との間でも同様で、柔軟に考えていくことで有効な協業のアイディアが生まれてくると考えています。