優秀なサラリーマンが起業をする必然性。投資家じゃなくて、経営仲間として応援し続けたい

2019.11.20

今回のインタビューでは、人材エージェントとして、55社以上のアドバイザー・エンジェル投資・社外役員を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行してきた株式会社キープレイヤーズ 高野 秀敏氏にこれまでのキャリア・ご経験に関してお伺いした。

上場しても株を全部売らず、応援し続ける

はじめに、高野さんのベンチャー企業との関わり方についてお伺いします。

私は、エンジェル投資家なので、投資というよりは、経営者の仲間になるという感覚が強いです。顧問のような立場で、サポートさせていただくことが多いですね。私の本業の採用面や広報面でのお手伝いをしています。

そうしたコミュニケーションの中で、経営者の方が、私を信頼して関係を深めたいからとご自分の株を譲渡してくださるケースがあります。結果を出している企業は、ベンチャーキャピタルからお金を集めることができるので、資金的に不足しているわけではありません。それでも声をかけていただけるというのは、嬉しいですよね。

最近上場した識学も、代表の安藤広大さんから声をかけていただきました。素晴らしい会社だと思っていたので、ありがたかったですね。

ちなみに、最初の頃にお手伝いしたメドレーやクラウドワークスは、エンジェル投資というよりは創業役員の形で関わりました。その頃は、一緒に創業することがトレンドだったのです。その後、投資家が増え、エンジェルラウンドやエンジェルとベンチャーキャピタルが同時に入るといった時代を経て、再び一緒に創業するスタイルになってきているように思います。最近は、スタートアップスタジオのように起業から関わったり、株式を少し譲渡していただいてお手伝いをしたりするケースを見かけますよね。

今後も、増資ではなくても、経営者の方が「味方を増やしたい」あるいは「経営の役に立ちそうだ」と思ってくださり、株譲渡の申し出をいただくことについては、ポジティブにお受けしていきたいと思っています。

起業家と投資家の関係は、お金を出す人が上であるといった見方が強いですが、高野さんは、「一緒にやりたい」と声をかけてもらったことを大事にされているのですね。

そうですね。私は、上場しても株を全部売るつもりはありません。もちろん、企業側から「売ってくれ」と頼まれたら、次の株主のために売りますが、基本的にはずっと持っているつもりです。社長の情熱が続く限りは応援したいと思っているからです。そこが、私とベンチャーキャピタルとの違いかもしれません。

ベンチャーキャピタルとエンジェル投資家の役割は異なりますよね。

ベンチャーキャピタルは、コミットメントが強くて、上場させることが目的です。上場したら、株式を売却して次のスタートアップに投資します。

対して、エンジェル投資家は、基本的に頼まれたら検討するというスタンスの方が多いと思います。ベンチャーキャピタルと比較して、コミットメントが弱いのです。

巻き込み力のある経営者が好き

どんな経営者に魅力を感じて、投資を決断するのでしょうか。

「巻き込み力」のある経営者が好きですね。巻き込み力は、ビジネス全ての前提になる力だと思います。

また、その領域で強い人なのかどうかも重要視しています。例えば、Fintechは、経営者の専門性が高い業界ですよね。レベルの高い領域で戦っていくには、より優秀さが求められます。

仕事のしやすさという意味では、能力が高くて、リーダーシップがあって、決断できる方がいいですね。私の仕事はお手伝いなので、経営者にこうした素養がなければ成立しません。

お金儲けが得意であることも大切です。現代的に言うならば、利益はすぐに出なくても構わないですが、売上が上がらないとビジネスとして厳しい。売上が伸び悩むことの裏には、課題があると考えています。

高野さんが魅力を感じる投資の領域やステージを教えてください。

領域は、ITをメインとして幅広く投資していますね。成長性の高いマーケットであることは重要です。

できれば、起業前のサラリーマンで高い実績を誇っている方に会いたいですね。起業に至るまでに時間がかかる場合もありますが、待つ価値があると思っています。

それほど優秀な方であれば、遅かれ早かれ「起業をした方がいい」という結論に行き着くはずだからです。

採用できる方法を考え抜く

これまでどのような失敗を経験してきましたか

細かい失敗は毎日のようにありますが、致命的な失敗はないように思います。

ずっと人材に関わる仕事に携わってきたこともあり、人選を間違えるケースがほとんどないので、大成功まではいかなくても、大失敗もないのだと思います。

日本は、ヒト・モノ・カネ・情報の4つの中で、ヒトのウェイトが大きいですよね。世界3位のGDPでありながら、少子化によって人材不足です。先進国の中で人が足りていないのは日本だけではないでしょうか。

だからこそ、私の役割があるのだと思います。もし、私が投資しかしてこなかったら、今の結果にはなっていないでしょうね。

人材不足の社会で、優秀な人を採用するためにはどうしたらよいのでしょうか。

「採用にお金がかかりすぎる」とか「良い人材を採用することは難しい」といった声をよく耳にします。でも、そんな難しい局面であっても、採用に成功している会社があることも見逃してはいけません。自社と、採用がうまくいっている会社とでは何が違うのかを考える必要があります。

そもそもベンチャー企業を志望する人は少ないという前提に立って、事業内容を考えていかなければいけません。儲かる事業モデルであることは重要ですが、儲かる事業モデルの会社だから入社したいという人はそこまで多くはありません。将来的に株式上場ができそうな会社であったとしても、お給料が少なければ選ばないですよね。

ストックオプションがほしい人もいますが、実は興味がない人も多いんですよ。

とはいえ、妥当なラインを見出すことは難しい。そこで、お給料をいくらにすべきかを悩んでいる企業に向けて、キープレイヤーズでは年収査定というサービスの提供をはじめています。

積極的にアプローチすることで道は拓く

最後に未来の起業家へのメッセージをお願いします。

今は、起業家にとって圧倒的に有利な時代です。起業するなら今がいいと思いますよ。

資金調達もしやすい。これから不景気になる可能性が高いので、調達をするなら早めにしたほうがいいですね。資金調達については、後から価格を下げることが難しいので、最初の座組が重要です。

先ほどお話ししたとおり、エンジェル投資家は、ベンチャーキャピタルのように積極的に起業家に連絡をすることはありません。ですから、躊躇せずに自分から連絡をとっていくといいと思います。連絡をするのはタダですからね。

私自身は、ご紹介いただくこともありますし、起業家の方から直接TwitterやFacebookなどでご連絡をいただくこともあります。直接の場合は、最初はチャットでやりとりをして、マッチしそうな方であればお会いしています。可能性がありそうかどうかは、お会いして3〜5分お話をすればわかりますね。

あと1つアドバイスがあるとすれば、誰が社長なのかは決めた方がいいと思います。私の経験では、社長が2人の会社はうまくいかないケースが多いように思います。3人になるとうまくいくんですけどね。

私自身は、コミットを高められる企業と一緒にやっていきたいと思っています。ともに、頑張りましょう。