同調圧力が日本をダメにする。言語化し、プレゼンし、スタートアップは成長する。(後編)

2019.07.03

プレゼンのスペシャリストとして様々な年代から支持を得る澤 円(さわ まどか)さん。生命保険IT子会社の文系エンジニアとしてキャリアをスタートさせる。その後、外資系テクノロジー企業へ転職。同社では、情報共有系コンサルタント、プリセールスSEを経て、現在はテクノロジーセンターのセンター長を務める。 

近年では、上述の業務と並行して、幅広いテクノロジーの啓蒙活動を行う傍ら、数多くのベンチャー企業でメンターとしても活動する。前回の記事に引き続き、そんな多忙な毎日を送る澤さんが、いま最も熱を入れて取り組んでいるベンチャー支援についてのお話を伺った。

社会が共感できる「ミッション」、「ビジョン」にファンが付いてくる

ビズリーチを始め様々なベンチャー企業の成長を間近で見届けてきた澤さんですが、成長するベンチャー企業と失敗するベンチャー企業の違いはどこにあると思いますか。

「ミッション」「ビジョン」が組織に根付いていて、それが「言語化」できているかどうかが成長を左右するポイントです。「ミッション」「ビジョン」に社員全員が共感して、組織に深く根付いているベンチャーは、成長するところが多いです。どんな価値観をメンバー間で共有していて、どのように世の中を変えていきたいのか、ということがその企業が成長するためのもっとも重要な土台部分になるからです。この土台部分が頑固であれば、「ミッション」「ビジョン」を同じ言葉で面接に来る候補者を口説けるだけでなく、事業に高いハードルが課された時に組織が空中分解することもありません。

逆に、「ミッション」「ビジョン」が自分たちだけを向いているベンチャー企業は失敗する傾向にあります。自分が楽しく仕事をすることは大事です。楽しくなくてはビジネスは継続しないからです。でも、自分以外の人から共感してもらえないことをビジョンにしても上手くいくはずがないんです。単純な話ですが、「お金持ちになること」をビジョンに掲げる人よりも、「今の世の中を変えたい」という想いをビジョンに掲げる人の方にたくさんのファンが集まり、お金も流れてきます。そういった意味でも、社会が共感できる「ミッション」「ビジョン」の土台を作り、さらには「言語化」までできているベンチャー企業は、多くの人に共感してもらいファンを増やせる確率も上がるので成長しやすいんです。

ベンチャー支援から生まれる「最大多数の最大幸福」

ベンチャー支援に多くの時間を投資されている澤さんですが、ここまでベンチャー企業と全力で向き合う根底にはどのような理由からでしょうか。

ベンチャー企業の支援に自分の時間を投資しているのは、僕自身の掲げる「最大多数の最大幸福」というミッションに合致しているからです。このミッションを自分の中心に据えたのは、講演の場で自分以外の誰かのために自分の経験を言語化して伝える機会が増えたことがきっかけでした。講演を繰り返す過程で、これまでのキャリアで得たノウハウを言語化して、アウトプットすることに大きな意義を感じるようになっていったのです。そして、一人でも多くの人が自分の人生を面白く、楽しく生きるための手助けがしたいという想いが徐々に強くなっていきました。このような抽象的な想いを言語化して表現したのが、今の僕のミッションである「最大多数の最大幸福」です。つまり、この言葉は、より多くの人にたくさんのハッピーを届けるということです。

そして、ベンチャー企業の支援は、まさしく「最大多数の最大幸福」に繋がります。僕がメンターとして携わったベンチャー企業が瞬く間に成長を遂げて、あっという間にハッピーになっていく姿を幾度となく見てきました。また、ベンチャー企業が成長して、その企業が提供するサービスが世の中に普及すると、ハッピーがサービスを利用するユーザー(一般の人々)にも波及していきます。

ビズリーチも、6名でマンションの一室からスタートして以来急速に成長して、今やテレビCMで見かけるほどの企業になりました。既存の転職サイトや転職サービス双方の性質を併せ持ったビズリーチのサービスは、転職市場のあり方を大きく変えました。特に、ハイクラス人材の転職に特化したことで、企業側と転職者側双方の抱えていた課題を解決するソリューションとして今では広く浸透しています。ハイクラス人材は自分の個性や能力を存分に発揮して働いて、企業側は自社の成長を加速させるために最適な人材に出会える可能性が今後も高まっていくこと予想されます。こういった事例を経験すると、やはり「最大多数の最大幸福」というミッションの実現にはベンチャー支援が欠かせないと考えています。だから、これからもそんな現場にたくさん立ち会えるように、今後もベンチャー企業の支援は続けていきたいですね。

若い世代が自分の個性を発揮して楽しく生きられる未来へ

最後に、様々な舞台で活躍をされている澤さんが今後注力していきたいことについて教えてください。

ベンチャー支援ももちろん継続していきますが、ここ数年で教育の分野への関心も高まってきました。教育を通じてこれからを担う若い世代が、自分の個性を発揮して人生を楽しく生きるための情報を提供していきたいです。

もともと、同調圧力による横並びを良しとする日本特有の文化に違和感を感じていました。出る釘は打たれるというか、性格や能力の面でとんがってる人が窮屈な思いをしてしまうことも多いからです。もしかしたら、自分の知らないもの、普通ではないものを無意識に抑圧しているのかもしれません。このような現状を踏まえると、とんがってる人が自分の人生を快適に過ごしてもらえるような環境を、教育をベースに作れたらいいなと考えるようになったんです。

現在は、教育活動の一環として、琉球大学の客員教授として講義をしています。大学生に、ITを活用したグローバル企業の経営マネジメント手法や経営指標の可視化などについて解説しています。また、Hand-Cが運営しているサタデースクールも講師としてお手伝いをさせて頂いてます。サタデースクールは「自らの人生を切り開く力」を育むをモットーに、自由な学びが知りたい子供たち向けにちょっと変わった教育プログラムをお届けするアフタースクールです。

こういった活動が、これからの時代を担う若手世代が自分の個性を発揮して楽しく生きるためのきっかけになれば最高ですね。そのために、これからも自分のリソースを使って積極的に教育には携わっていければと思います。