学びは厳しい言葉から。情熱と誠実さが成功の鍵。当事者意識が起業を支える。(後編)

2019.06.12

今回のインタビューでは、株式会社KVPでパートナーとして活躍する御林 洋志(みはやしひろし)さんにお話を伺った。大学在学中に公認会計士試験に合格後、新卒で有限責任監査法人トーマツに入社。同社を退職後にシリコンバレーでのスタートアップ支援を経て、2013年から日本で投資家としてのキャリアをスタート。現在は、数多くの起業家・組織を見てきた経験を活かして、シード・アーリーステージのベンチャー企業への投資支援、資金調達、経営支援に従事している。前回に続き、投資家として起業家から信頼を得るために「当事者意識の強さと共感力」が必要だと語る御林さんの投資家としてのマインドセットに迫った。

「情熱」と「誠実さ」のバランス感覚

これまで様々なスタートアップを支援してきた御林さんですが、魅力を感じるスタートアップにはどのような特徴がありますか。

事業内容や事業戦略など細かい点も重要ですが、それ以上に「情熱」と「誠実さ」を兼ね備えている経営者がいるスタートアップは魅力的だと思います。

「情熱」というのは、事業対象にしている領域に対してどのくらいの熱量を持って取り組んでいるかという意味です。

例えば、領域に対しての情熱を持っていると、ユニークな視点から市場を捉えることで独自の仮説を構築でき、事業の創出につなげることもできます。特に、シードステージのベンチャー企業へ投資をする場合、最初のプロダクトが失敗に終わってしまうケースもあります。そういった状況下で、たとえ最初のプロダクトが失敗に終わってしまっても、その領域で培ってきた誰にも負けないノウハウやスキルを信じて、また違う事業アイデアで勝負することができます。

このような絶対に諦めない信念や、周りの人を巻き込んで事業をスケールさせる活力の根底にはその事業や領域への「情熱」があると考えています。
またそれだけでなく、「情熱」の強い方は巻き込み力が高いです。投資家や事業提携候補先だけでなく、採用においても強さを発揮します。

領域への情熱を重要視しているのは上述の通りですが、それに加えて誠実な起業家の方と一緒にお仕事ができればと思います。

シードの段階で投資をしてハンズオンで経営者のビジョンの実現に向けて伴走をするので、誠実な人でないと同じ船には乗れないからです。

また、「情熱」と「誠実さ」のバランス感覚が取れている起業家は、事業成長のために多方面からのアドバイスに耳を傾け、その上で、自分自身としての意思決定が下すことできるので、事業成長を促進させることができると考えています。

起業家と同じ船に乗るための「共感力」と「当事者意識」

御林さん独自の強みとそれをスタートアップの成長にどのように活かしていますか。

投資家として一番大切にしていることは、当事者意識を持って起業家に接し、事業やビジョンに深く共感することです。事業が失敗することも多いからこそ、起業家と同じ船に乗る気持ちが大切です。そのためには「共感力」と「当事者意識」が重要な要素になります。

例えば、当事者として起業家と同じ土俵に上がるためにも、会社としての判断の前に「こういう理由で私は投資をしたいと思っています」など、自分の思いを起業家に伝え、明確な意思表示をすることが重要です。

そういった高いレベルで当事者意識を持って仕事をするためには、起業家への愛や事業への愛を持って仕事をすること「共感力」が前提条件になると思います。また、「当事者意識」や「共感力」があるからこそ、スタートアップの起業家の視点に立って物事を捉え、起業家のビジョン実現のための支援に注力できると考えています。

また、ビジョンが壮大で、目標を高く設定している人を応援するからこそ、ビジョンの実現に向けたストーリー構築のプロセスも大事にしています。

ストーリー構築というのは、ビジョンの実現のためにまず何をすべきなのかを考え、事業の仮説検証のストーリーや、エクイティも含めた資金調達のストーリーなど、そういったストーリーを一緒に作るプロセスです。

こういったストーリーを作るためにも、当事者意識がなければ、一緒に作ることはできないので、投資家として起業家に近い目線で当事者意識を持って仕事する姿勢はやはり必要不可欠だと考えています。

熱い情熱を持つ起業家に愛される投資家を目指して

最後に、会計士、投資家として経験を積まれてきた御林さんですが、今後の目標について教えてください。

自分自身の大きな目標として、ベンチャー企業への支援を通じて日本経済の発展に貢献したいという思いがあります。ただ、これは目標というよりはマインドの話になるので、まずは会社としても個人としても、熱い情熱を持つ起業家に愛される投資家でありたいと思っています。

自分自身が起業家に対して価値を提供することは大前提です。そのために、新しい技術やイノベーションが生まれていく中で、自分自身をアップデートし続けていきたいと考えています。

会社としてはシードステージのベンチャー業界の中で、1番のプレゼンスを誇れるようなベンチャーキャピタルになることを目指しています。そして、個人としても「御林さんいいよね」と、たくさんの起業家から声をかけてもらえるような人を目指したいです。