10年やり抜けるか。「時間を投資する」エンジェルの挑戦。

2019.04.25

慶應大学SFC在学中にスタートアップの世界に傾倒し、起業を経験。同大学卒業後は、ユニリーバ・ジャパンへ新卒入社後、個人レッスンのマーケットプレース「サイタ」を運営するコーチ・ユナイテッドを創業。2013年に同事業をクックパッドへ売却後、2016年2月に同社の社長を退任。その後、エンジェル投資家として国内外のスタートアップの経営支援を始める。投資先はマネーフォワード、キャディ、レンティオ、Azoop、Kanmu、MaterialWorld、WAmazing等、日米約60社。 

シード投資家として成果を残し続け、スタートアップ業界の多方面から注目を浴びる有安さん。「時間を投資する、というエンジェル投資家の新しいコミットの仕方」から「最近、創業して数年の異例のスピードで大型資金調達に成功したスタートアップ」まで、スタートアップのリアルな現場についてお話を伺った。

10年間やり抜く覚悟がある起業家が好き。思想に共感できる起業家へ賭ける。

起業家と投資家、2つの顔をもつ有安さんですが、今回のインタビューでは投資家としてのお話をメインに伺いたいと思います。はじめに、エンジェル投資家としてスタートアップへ投資をする際のスタンスについて教えてください。

現在、60社のスタートアップへ投資をしています。結果的には投資先はだいぶ増えましたが、社数を増やそうとしているというわけではなく、思想に共感できる起業家へ賭ける、というスタンスで投資をしています。お金以上に自分の時間を投資して事業成長に貢献したいと考えているので、こういうエンジェルは珍しいかもしれません。「起業家の目線の高さ・腹決め」のような外部調達しづらい資源をもつ会社に魅力を感じます。

また、「数年で事業を売却したい」であったり、「とにかく金を稼ぎたい」というような経済的な動機の強い起業家については、それはそれで魅力的かつ正直でいいな〜と思うのですが、私の個人的な好みとしては、10年間やり抜く覚悟がある起業家が好きです。日本に限って言えば、10年やり抜けば、事業はどうにかなると思うんですよね。例えば、中国ではある新しい事業が伸びていることが周知の事実になると、完全にコピーした競合が5社、10社一気に立ち上がることが時々あります。競争環境が激烈に厳しい。日本ではそういうことはありません。ユーザファーストな事業開発思想をもって、顧客に向き合って、愚直にユーザペインの解決を追求する。やるべきことを、やるべき順番で粛々とやれば、事業価値が毎年積み上がっていく。日本は、起業の努力が実りやすい国だと思います。だから、(1) 市場選択が間違っていない (2)起業家が10年やり抜く腹決めができている、という2つの条件を満たせば、判断が難しいアーリーステージの投資といえども、投資判断を大きく間違えることはないと考えています。

シリーズAの資金調達にコミット。

エンジェルとして「時間を投資する」とのことですが、最近投資したスタートアップについて教えてください。

最近だと、2社のスタートアップのシリーズAの資金調達をかなりコミットして手伝いました。1社目は、中古トラックのBtoBマーケットプレースを運営するAzoop株式会社です。

創業1年で4.5億円調達への成功の経緯。

同社は、創業1年で4.5億円調達に成功したと報道されましたが、投資をした経緯についてお話いただけますか。

Azoop創業者の朴さんから、Facebookメッセンジャーで直接連絡をいただいたことがきっかけでお会いすることになりました。まず第一に魅力を感じたのは、中小の運輸事業者のトラック売買の現場が、ユーザーペインに溢れていること。紙や電話を使ったやりとりや、多数の仲介業者の存在など、素人目に見ても改善の余地があることは明らかでした。第二に、10年やり抜ける創業者。社長の朴さんの実家は、創業40年の中古トラック買取業者です。家業での原体験があり、業界の酸いも甘いも知っている社長と議論していて、ジグソーパズルがハマったような感覚をもちました。その自分の直感を根拠に、売上0円のプロトタイプの段階で2,000万円を出資する判断をしました。

スーパーエンジェルを目指して、全力で手と足を動かしてみた。

どのように「時間を投資」したのでしょうか。

「出資した後、時々は相談にのるけど基本的にはほったらかし」が一般的なエンジェル投資家だとしたら、対照的に手も足も動かすスタイルの、スーパーエンジェルっぽい動きを、試しに全力でやってみました。事業の勝ち筋作り、ピッチ資料作り、KPI計画の添削、資本政策の調整、ストックオプションの発行プラン策定、VCアポ同行など、パートタイムCFOのような感じで動き、一番忙しい時期は、週4日くらいAzoopオフィスに通って議論を重ねました。でも、中古トラック売買という自分が全く明るくない市場だったので、とにかく、成長戦略の議論が楽しかった。最終的には、素晴らしいVCの方々に4.5億円を出資していただいたので、自分としてもやりがいのある数ヶ月間となりました。事業についても、すでにトラクションがある事業なので、今後の飛躍が大変楽しみな会社です。