やらないことがない! ハンズオンを超えた「フルコミット」の強みとは

2020.02.07

Full Commit Partnersはハンズオンを超えた圧倒的な現場支援を武器に、ファイナンスから、営業、事業開発、採用、事業戦略まで、VCという枠を越え、起業家にフルコミットしている。自身を「投資家という言葉が嫌いな投資家」と評する山田優大氏に、VCにかける思いを伺った。

「投資家」という表現が嫌い。VCを起業した「起業家」

「Full Commit Partners」という社名が印象的だと思ったのですが、どのような意味が込められているのでしょうか。

「Full Commit」の部分は投資先の方につけてもらいました。
独立するにあたってどんな社名がいいかと話していた時に「山田さんといえばコミット力だよね」と投資先の方に言っていただき、「フルコミット」と。

あとはパートナーという言葉を必ずつけたいと思っていたので、合わせて「Full Commit Partners」になりました。

「山田さんはロマンがあるから」という理由で「ロマンパートナーズ」という名前も候補に挙がりましたね。

僕は、投資家ではあるけれど、投資家という表現や投資家という属性にいることに違和感があって、キャピタリストやファンドという言葉はつけたくなかったんです。

起業家と対等に寄り添っていく存在でありたい

−「投資家」という表現が嫌いなのは何故なんですか

まず「投資家」という表現には、起業家と距離があり対立しているイメージがあって、それがとても嫌いなんです。実際にお金を出している立場として強くなってしまう局面もありますが、あくまで僕は対等でありたい。上から目線になることは絶対にあってはならないと思っています。そもそも僕自身も「投資家」ではなく、VCを起業した「起業家」ですから。

Full Commit Partnersの会社ロゴも、投資先の起業家と腕を組み合う様子をモチーフにしています。ロゴとして目立つ反対色を使うのではなく、あえて同系色を選び、さらに上部を大きくすることで、同じ方向に成長していくことを表現しています。

もちろん共に成長を目指す人間として、厳しく言う局面もありますが、投資先の起業家と対立したり上下関係を作るのではなく、寄り添っていく存在でありたいです。

投資先に対して「やらないことがない」フルコミットが強み

具体的には、どこまでコミットするのでしょうか。

社名の通り「フルコミット」です。
僕は「フルコミット」について、営業の同行、事業計画の作成、採用から経理まで、投資先に対して「やらないことがない」と定義しています。「ハンズオン」よりもさらに深く関わる「フルコミット」ですから、本当になんでもやりますし、それが強みです。

例えば、一般的には起業家自身が事業計画を作って投資家にプレゼンすると思うのですが、シード期の事業計画であれば、起業家とディスカッションをしながら最終的に僕が主導で作ることが多いですね。圧倒的な量の事業計画を見ている自分だからこそ、その知見を活かして起業家にバリューを提供できると考えています。

また、投資先によってはすべての業務へのサポートが必要なわけではないので、その場合は部分的にコミットします。一例として、ある施設を運営をする会社においては、すでに現場にナレッジを持つプロフェッショナルの社員さん達がいるので、僕が出て行って何かをするということはありません。その会社での僕の役割は、トラブルシューティングというか、起業家のメンタルトレーナーとしてのサポートです。起業家は孤独で鬱になりやすいですから、心のケアが一番大事ですよね。昨日も社長と長電話をしました。

 上述のようなサポートに加えて、CFO業務も行っていますが、それはシリーズAまでと決めています。投資先が複数ある中で、流石にずっと見ているのは難しいので、そこはシリーズA以降のVCやCFOに任せればいいと割り切っています。

社数を絞るからには、共同創業したつもりでやりたい

投資する会社はどのように見つけるのですか。

基本的にはVC同士や起業家からの紹介です。

起業家の方に会う時期と会わない時期がありますが、オープン期間のときは、ものすごく会っています。例えば、最近ですと、1ヶ月で50人くらいの起業家とお話しさせていただきました。ただ、最終的に決まるのはその中から1社か2社くらいで、オープン期間の後は支援先の成長のためにフルコミットをしていきます。このサイクルをもっと速く回したいのですが、シード期は成長ペースが緩やかなのでなかなか難しいですね。

また、逆に僕から投資先をシリーズA以降の投資家を紹介する場合も多々ありますが、その場合はMTGに同席し、僕から「この人はこういう起業家です」と紹介します。一般的にVCが他のVCへ繋ぐ場合、起業家に対してここまで支援することはほとんど無いと思います。
 
シードVCは分散投資が基本で、1,000〜2,000万円くらいの投資額が通常なのですが、僕の場合は10社ほどに数を限定する分、1社あたりの投資額も大きい。起業家と同じだけのリスクをとります。社数を絞るからには、共同創業したつもりでやりたいですね。

現在は何社に投資しているのでしょうか

現在は8社です。2020年4月までに10社が目安です。少し走りすぎと思われるかもしれないのですが、2018年5月に創業した時点で、すでに話をしていた4社に投資をしていました。その年は他に2,3社ほどオファーを出していたのですが、ご縁がありませんでしたね。2019年は、1月に1社、6月に2社、12月に1社出資しました。

投資する業界は様々ですが、個性的な会社が多い印象です。

そうですね、エモい会社が多いですね。
特に最初の4社には思い入れがあります。

例えばインキュベイトファンド時代に投資させていただいたウーオという会社は、B2Bマッチングでメルカリの水産業版のようなプラットフォームを作ろうとしたのですが、最初はまったく上手くいかなくて。

当時の上司に頼んで、鳥取まで飛び、実際に漁業事業者の方々に話を聞いて回ったのですが、「現場でのやりとりは電話とFAXが主流だから、プラットフォームなんて使わない」とはっきり言われてしまいました。投資やテックという言葉にも馴染みがなかったようで、相当警戒されてしまいましたね。このような状況下で、社長とこれではうまくいかないと判断して、その時点でピボットしました。

代わりに何ができるかと考えながら現場を見ていると、車で15分くらいの距離の離れた2つの港で魚の価格が3倍も違うことに気づいて、現場の方に全国の漁港と比較した時の魚の価格差はどうなっているのかと聞いたのですが、誰も分からなかったんです。

それならば情報を握って、魚の価格が株価のような形でわかるプラットフォームを作れば、現場でもそれを使わざるを得なくなると思い、そこを目指すことにしました。

その後ウーオの社長にVCとして独立する報告をさせて頂いたのですが、社長自ら「山田さん、ずっと一緒にやりましょう」と言っていただき、社長の個人株譲渡を提案して頂きました。VCが投資先の社長から株式を譲渡されるという事例はあまりないと思いますが、これは仕事で信頼関係が築けたからこそだと考えると、本当に嬉しかったです。

−新規の投資先ではいかがですか。

新規の投資先では、Greeen Spoonというカスタマイズスムージーを作っている会社がいいですね。

1月にサービスローンチをできたのですが、圧倒的にプロダクトが良く、尖っている。何より最高に美味しいです。チームもサイバーエージェント卒の優秀なメンバーで、周辺の方々を上手く巻き込みながら事業を進めてきていて、大いに期待しています。

またDAYLILYという女性向け漢方健康食品を扱っている会社も好調です。女性はひと月のなかで体調の変化があり、冷え性や貧血で辛い思いをしている方も多いと思うのですが、その悩みに寄り添ったサービス/商品を提供しています。大手百貨店を中心に現在国内2店舗展開していて、次は有楽町のマルイに出店予定です。

後編に続く