株式投資型クラウドファンディングって何なの? イークラウド代表波多江さんの描く資金調達の『これから』

2020.02.27

1. 投資家と経営者、両方経験して見えた道とは

田原彩香氏(以下、田原):皆さん、こんにちは。この番組は投資家プロフィールサイトのバンドオブベンチャーズがお送りいたします。毎回のゲストには、今をときめくベンチャー経営者、投資家を迎えまして、インタビューをしていきます。

本日お越しいただきましたのは、イークラウド株式会社の波多江さんです。よろしくお願いします。

波多江直彦氏(以下、波多江):よろしくお願いします。

田原:そして、パーソナリティはビジネスタレントの田原が、渋谷道玄坂スタジオよりお届け致します。

それでは、まず簡単に自己紹介をお願いします。

波多江:イークラウド株式会社代表取締役の、波多江直彦と申します。イークラウドは、株式投資型クラウドファンディングという事業に参入を発表している会社になっています。

田原:最近プレスリリースを拝見したのですが、これまでは取締役だったんですよね?

波多江:2018年にイークラウドを共同創業して取締役としてやっていたんですが、この事業を本格化させようということで元々予定していた代表交代をして、2019年の12月から代表をやらせて頂いてます。

田原:準備を長くしていたというわけですか?

波多江:設立をしたのが2018年の7月で、大和証券グループの会社から出資をしてもらったのがその年の11月でした。そこから一年強準備をして、表舞台に出るか出ないかっていうタイミングになってきました。

田原:これからイークラウドの事業を進めていくと思うんですが、意気込みをお願いします!

波多江:僕たちは株式投資型クラウドファンディングという事業をやっていくわけですが、2015年に法改正がありまして、2017年に日本でも市場が始まった新しいビジネスになっています。僕たちは2018年に事業の発表をしたのですが、金融商品取引業者としての登録が必要で、慎重に体制を整えたり、社内のルールを整備したりだとか、準備が大変なんですよね。

田原:金融商品取引業者としての登録が必要であることを考えると、それに伴って色々な準備が必要そうですよね。

波多江:ITビジネスのベンチャーだと、3ヶ月、長くて半年くらいで最初のプロダクトを出して世の中の人に見てもらって、ブラッシュアップしていくっていうケースが多いと思うんですが、僕らの場合、ITの部分ができていても登録を含めて準備が完了しないと事業が始められないという事業の性質がありますので、倍以上の時間をかけてここまでやってきていますね。

田原:準備をするときは、具体的にどんなことをするんですか?

波多江:スマートフォンやパソコンから申し込みが出来るようにするのはもちろんなんですけど、誰からどんな申し込みがあったときにいつどんな処理をするのか、みたいな会社内のルールであったり、マニュアルを作るのが求められますね。そして、自分たちが作ったものが本当にそれでいいのか関係者にチェックしてもらう、っていう手順を踏む必要もありますね。

田原:波多江さんはこれまで投資家だったり色んなキャリアを積まれていると思いますが、クラウドファンディングの事業は元々やりたかったものなんですか?

波多江:以前にCyberAgentの子会社を経営していて、どこかのタイミングでもう一度事業をやりたいと思っていて、ここ最近VCをやっていたときも投資と事業両方やりたいと思い続けていました。そこで、事業によりコミットしていきたいという話をグループ内でして、クラウドファンディング事業は自分にも合っていて勝ち筋が見えると思ったので、この事業を始めましたね。

田原:今後は起業家としてイークラウドを中心としてやっていくんですね。周りの反応とかはどうでしたか?

波多江:今回の代表交代についてFacebookで投稿したんですが、1,000いいねくらいもらえて、以前転職したときが700いいねくらいだったのでかなり応援してもらえてると思って嬉しかったんですが、同時に責任感みたいなものを感じました。

田原:1,000はすごいですね。でも確かに1,000人くらいの期待からなる責任も伴うってわけで。

波多江:これまで5年間くらい投資家側として経営者にあれこれ言ってきた立場でしたが、逆にこれから、あいつ出来てなくない?とか言われる立場になると思うと、相当ダサいですしプレッシャーに感じますけど、今まで色んな経営者と議論してきた経験があるので、今回の事業は早々に花開かせたいですね。

田原:これまでは投資家として起業家の支援をするっていう立場が結構長かったですよね。立場が逆になることに楽しみもあり不安もあるみたいな。

波多江:そうですね。不安もありますけど、いわゆるコンフォートゾーンを抜け出すことが大事と言われることが最近多くなっていて、今回のチャレンジで生じた事業家としての健全なストレスみたいなものを楽しんでいこうかなという腹積もりでやっています。

田原:今イークラウドは何名体制でやっているんですか?

波多江:10数名くらいですかね。

田原:スタートアップとしては、割と多めですかね?

波多江:元々は1,2名で始めていますが、金融商品取引業者の登録に必要な体制が法令などで定められていますので、それに合わせて補強する形で増えていきましたね。半分は20〜30代のIT出身者でいわゆるスタートアップ人材と呼ばれる人たちですね。変わっているのは残りの半分の人で、金融系出身者になるんですが、最年長で64歳の方もいますね。

田原:64歳!それはすごいですね。

波多江:父親と同じくらいの年齢になる方々とと同じチームを組めるのはすごくユニークだなと思いますね。

田原:64歳だと、失敗や成功の一通りの経験をしているベテランですから、頼りになりますよね。

波多江:去年経済ドラマがチーム内でブームになって、しんがりとかハゲタカとかよく見てたんですけど、そういう時代の証券会社とか金融機関で経験を積んだ人たちとチームを組んでいるので、ドラマの中の人が現実にいるみたいな感覚がありますね(笑)。

田原:波多江さんはこれからドラマを作る側ですもんね。

波多江:そうですね(笑)。色んな人生のドラマを演出していきたいですね。

田原:クラウドファンディングはこれから一般の人に浸透していくような事業ですので、どんなドラマができるか楽しみですよね。

波多江:日本では2015年からクラウドファンディングの市場が仕上がり始めて、2019年の末にマクアケというCyberAgentのグループが上場して、時価総額が初値で180億くらい、今で500億くらいの値がつく時もあったので、かなり世の中から期待されている領域だと思っています。彼らが作ってくれた流れに上手く乗りながらやっていきたいと思います。

田原:それではこの後も引き続き、株式投資型クラウドファンディングについてお伺いしていきたいと思います。

2. 非上場の株を買える? 株式投資型クラウドファンディングとは

田原:イークラウドの株式投資型クラウドファンディングについてなんですが、こちらについて分かりやすく教えていただいてもいいですか?

波多江:分かりやすく!ハードル上がりましたね(笑)。株式投資型クラウドファンディングは、個人の投資家が、ベンチャー企業などの会社の投資が出来るっていう仕組みになりますね。個人投資家は、一社につき1年間で最大50万円まで、資金調達をする起業家の方は、個人の投資家から1年間で合計1億円未満まで出資を受けてよい、というルールがあります。非上場株については投資をする機会があまりなく、一部の方に限定されたもので、地方で非上場株を利用した詐欺が横行したという歴史もありました。そんな非上場株を僕たちが厳正に審査してWeb上に公開し、個人の投資家が買いたい物を探す、というプラットフォームを作るのがビジネスの内容になっています。

田原:これまでは一般の方は未上場株には投資する機会がなかったんですね。

波多江:僕らは非上場株って呼んでるんですけど、ベンチャー企業とかの上場していない株に投資する機会を提供したりしてますね。

田原:上場した株は気軽に買うことができますもんね。

波多江:上場した株はどこの証券会社からでも買えるんですが、上場していない会社の株は買う機会があまりないので、それを僕たちはWebから申し込めるようにしています。

田原:これが、株式投資型のクラウドファンディングになるわけですね。

波多江:クラウドファンディングで言うと、物を買うような購入型のクラウドファンディングや、寄付型のクラウドファンディングがあるんですが、僕たちは投資型に位置づけていますね。

田原:いっぱい種類があるんですね。

波多江:そうですね。クラウドファンディングの類型は6つくらいあって、その中の株式型ということになりますね。

田原:なんで株式投資型にしたんですか?

波多江:購入型だと先行購入みたいな感じで、融資型だと金利何%ってついたりするんですが、株式投資型だと、リスクもあってリターンもあるという商品設計をしておりますので、より面白みがあるかなと思っていますね。他のものよりハイリスク・ハイリターンにはなりますね。

田原:皆さんが実際に非上場株に投資できるようになるのはいつ頃からになるんでしょうか?

波多江:先行でこの事業をやっている会社があるので僕たちは後発になるんですが、リリースに向けて最終調整をしています。

田原:波多江さんは昔から株とか金融が好きだったんですか?

波多江:小学校の文集には、「日本銀行の頭取になる」って書いてましたね(笑)。

田原:カッコいいですね(笑)。小学生が言うものなんですね。

波多江:当時は、銀行の中で一番偉いのは日銀なんだ、って思って書いた記憶がありますね(笑)。その後社会人で結局ITビジネスの世界に入りましたが、結果的には繋がってくるんだな、っていうのは感じましたね。

田原:でも、これから日銀の頭取みたいな感じになっていくんじゃないですか(笑)?

波多江:そうですね、可能性があるならそういう道も考えたいですね(笑)。日銀の方、ご連絡お待ちしています(笑)。

田原:日銀の方聴いていらっしゃったら、ご連絡をお願いします(笑)。話を戻すと、非上場株は誰でも買えるようになるんですか?

波多江:正確には誰でもというわけではなくて、一定の金融資産を持つ方が非上場株を買える様になっています。その理由としては、すぐに売買するわけではなく、3年とか5年であったり長期的に株主となって企業を支えていく必要がありますので、短期的なトレード目的でのプラットフォームではない、性質があります。僕らも審査上一定の金融資産をお持ちの方だけに入っていただくという形にするつもりです。大企業や外資系の方々など、一定の金融資産をお持ちの方であったり普段から株式をトレードしているような方は、一般的なターゲットとなります。

田原:短期ではなく長期で保有する、投資の基本的なことですよね。

波多江:長期分散型、みたいな形でベンチャー株を保有してもらうのも面白いんじゃないかなと思います。

田原:そうなんですね。感覚的には短期だというイメージを持っていました。

波多江:株の短期でいうと、秒単位とかそれ以下のデイトレードの世界になっちゃうので、仕事中とかも張り付きになっちゃうんですよね。僕も社会人の最初営業をやっていた時、営業のインセンティブよりもFXのインセンティブの方が大きくなっちゃって、トイレとかでずっとやったりしてました(笑)。社会人がそうなってしまうと勉強の時間とかがとれなくなって良くないと思うので、非上場株に投資して放っておいて、忘れた頃に利益が得られるのも面白いんじゃないかなと思っています。

田原:これまでは投資家側の話でしたが、投資される側のベンチャー企業には、どういうモチベーションの人に使ってほしいとかはありますか?

波多江:ベンチャー企業にとっては資金調達の一つの手段になると思っています。今までは銀行しかなかったのがVCが出てきて、売却側の会社が出てきて、エンジェル投資家が出てきてって流れの中で、僕たちは株式投資型クラウドファンディングもその中の一つの手段として位置づけていきたいと思っています。それぞれの手法に特性がありますので、それを理解して使って頂けたら色んな可能性が拓けるんじゃないかな、と思います。

田原:となると、資金調達をしたい起業家の方に使って頂きたいということですか?

波多江:そうですね。資金調達を思い立った瞬間に思い出して頂けるような手段にしたいですし、その中で果たせる役割もありますし、そのために僕たちのサービスや商品性を磨いて、起業家の方に選ばれる手段にしたいなと思っています。

田原:どんな会社に向いているとかってありますか?

波多江:広く色んな会社に使われると思うんですが、今は法律の規制として起業家の方は1年間で1億円未満までしか調達することができないので、ベンチャーファイナンスで言うところのシードやアーリーの会社には向いていると思っています。今後法規制が変わって5億10億と調達出来るようになれば、ラストファイナンスでも利用できると思います。今は法規制がありますので、必然的にシード、アーリーになるかと思います。

田原:ではこれから規制とともに変化していくのかもしれないですね。

波多江:そうですね。変化自体も生み出していきたいですね。

田原:切り拓いていってほしいですね。株式投資型クラウドファンディングについてお聞きしましたが、この後も色々聞いていきたいと思います。

3. 個人の金融資産は総額1,800兆円、そこに新たな使い道を開拓したい

田原:日本の資金調達の市場って、世界と比べたときの状況ってどうなんですか?

波多江:日本では、VCやCVCがベンチャー企業に資金調達してい額は年間約4,000億くらいと言われています。ここ5年で5倍くらいに成長しているので大きくなってきてはいるんですが、アメリカとかと比べると、40分の1くらいになりますね。

田原:40分の1ですか。

波多江:そうですね。アメリカでは年間約14兆くらいがベンチャー投資に使われていると言われていて、日本の4,000億とは規模が違いますね。

田原:まだまだ全然追いついていないんですね。

波多江:そうですね。この乖離があって、VCやってきた身としてはベンチャー投資に使われる金額を増やすっていうのをやってきたんですけど、新しく個人の金融資産をベンチャーに投資するという入り口を作れば、日本の個人の金融資産は1,800兆円あると言われているのでアメリカの14兆円という額を超えるポテンシャルを秘めていると思っています。Radiotalkを聞いている皆さんもこの一翼を担っていてだけると嬉しいです。

田原:なるほど。だからイークラウドを始めたんですね。

波多江:そうですね。そのための準備をずっとしてきました。今、クラウドファンディング単体で見ても日本のベンチャー投資額は20億くらいで、イギリスは500億と日本の25倍なんですね。それでも、イギリスも2012年くらいまでは数十億円くらいで、これから日本も花開いていく市場だと思っておりますので、イークラウドもそこに貢献できたらなと思っています。

田原:最近VCとかCVCとかが盛り上がってきているので、勢いあるように思っていましたが、世界と比べるとまだまだなんですね。VCの立ち位置だったり、投資の環境が違う可能性もありますね。

今後、イークラウドをどんな会社にしていきたいとか、思いはありますか?

波多江:イークラウドはIPOしたいと思っています。この価値を広げるためにも、IPO等を通じて色んな方に認めていただく必要があると思っています。何年か先、色んな過程を経てIPOという形を目指していきたいと思っています。

田原:IPOしたら道が拓けて、後に続く会社も出てくるかもしれませんよね。

波多江:株式投資型クラウドファンディングのカテゴリーではNo.1を目指して頑張りたいと思います。

田原:波多江さんとしては今後どうしていきたいみたいなことはありますか?

波多江:イークラウドにミッションとしては、「投資家に魅力的な投資の機会を創造し、挑戦者に新たな資金調達手段を提供する」ということを掲げていますね。今は株式投資型を準備していますが、今後色んな変化があると思っていて、そういう変化にチャレンジしていって、Fintech領域の中でも存在感のある会社にしていきたいですね。そこは会社としても個人としてもやっていきたいことですね。

田原:株式投資型以外でも新しい手段ができたら、取り組んでいくつもりですか?

波多江:そうですね。色々考えてはいますが、まだお話できる段階ではないですね。

田原:ではそれは音声外ということで(笑)。

波多江:そうしてほしいですね(笑)。

田原:ではこれから起業したいという方の新たな資金調達の手段として、気になる方はぜひ問い合わせてみてください。もう問い合わせとかはできるんですか?

波多江:コーポレートサイトはもうできているので、株式投資型クラウドファンディングに興味のある方からのご相談は随時お受けしています。

田原:もう既に相談を受けている会社さんとかってありますか?

波多江:これまでのお知り合いの方から僕たちの会社の事業に興味を持っていただくケースもありますので、そういう方にはクラウドファンディングの一般的な仕組みからご説明させていていただくこともありますね。

田原:ではそろそろまとめていきたいと思うんですが、波多江さんのほうから何か告知事項とか、メッセージ等ありましたら教えて下さい。

波多江:株式投資型クラウドファンディングの市場がまだまだ小さいので、正しい知識や情報が届いていないと日々感じています。僕たち自身これから発信していって誤解を解いて、新しい資金調達手段を起業家の皆さんに届けていきたいなと思っております。詳しい情報は、僕たちからの直接の説明ももちろん、TwitterNoteでも発信していますので機会があればご覧になっていただけると嬉しいです。

田原:Twitterは調べれば出てきますか?

波多江:そうですね。@nhataeでやってますね。

田原:ぜひぜひ見てみてください。採用についてとか、ありますか?

波多江:金融商品取引業者の登録が終わって本格的に動き出すというフェーズになると、多くの方の関与が必要になると思っています。具体的には10名以上採用したいと思っていますので、新しい市場やFintechの領域にチャレンジしてみたいという方はは、ぜひお気軽にご連絡ください。

田原:10名となると、結構採用するんですね。

波多江:そうですね。田原さんもどうですか(笑)?

田原:ついていけますかね(笑)。

波多江:ビシバシ鍛えますよ(笑)。

田原:仕事になると厳しくなるんですね(笑)。それでは、気になった方はぜひアクセスしてみてください。

バンドオブベンチャーズに掲載希望の投資家の方、そしてラジオご出演希望の方はお問い合わせください。また、バンドオブベンチャーズは財務戦略や管理業務に課題を抱えるスタートアップへのアドバイスもしております。気になった方は、ホームページをband.ventures、またはバンドオブベンチャーズで検索し、ご連絡ください。皆様ご連絡お待ちしております。

さて、波多江さんは今日ラジオ初出演ということでしたが、いかがでしたか?

波多江:緊張しましたね。お腹が痛くなりました(笑)。

田原:これから、プレゼンする機会も多くなるんじゃないですか?

波多江:今回ほとんどお見せ出来ていないですが、プレゼン用の資料もバッチリ作っているので、これからプレゼンであったりピッチの場を増やしていきたいですね。

田原:今日はラジオで音声だけなので上手く伝わりませんが、かなり色も多用して分かりやすい資料となっているので、ぜひ楽しみにしていてください。

本当に今日はお越しいいただきありがとうございました。

本日お越しいただきましたのは、イークラウド株式会社代表の波多江様でした。パーソナリティはビジネスタレントの田原でした。

バンドオブベンチャーズ、次回もお楽しみに!