スケールし、マーケットを創れる企業に共通するもの。 人を集める組織づくりとは?

2019.11.27

今回のインタビューでは、(株)ファインドスターグループ(持株会社)設立代表取締役で起業家輩出活動にも尽力されている内藤 真一郎(ないとう しんいちろう)氏。これまでのキャリアから、スケールできるベンチャー企業に共通するのは何か、次世代起業家への思いを伺った。

行き着いたのは、ワントップ・プロダクト型

まず、最初にこれまでのキャリアに関してお伺いしたいと思います。

最初に起業したのは、産業廃棄物の会社でした。次が人材派遣みたいな会社で、今のファインドスターで3社目です。23年もやっていると、当然方向性も変わってきます。産業廃棄物を選んだ理由は友人の会社に転職して、グループ企業を立ち上げるとのことで手を挙げました。

辞めるときは、スムーズにいかないことが多かったです。同僚や親友との起業でしたが、お互いなかなか譲らず行き詰まりました。経営陣は上下関係がないと組織的にはうまくいかない気がします。

いままでのキャリアで大変だったことはありましたか。

リピートビジネスじゃなかったことです。ファインドスターの創業初期はWEB制作をやっていました。制作事業は結局売り切りなんですね。

また、プロダクト型でなかったことも苦労の元でした。前職の先輩とお金がなくて、オフィスをシェアしてビジネスをはじめたときは、向こうはネット広告に途中でシフトしたんです。こちらは4人、先輩は1人だったのに、こっちはずっと2~3億で、先輩はあっという間に20億…。それを横で見ながら、やっぱりプロダクト型だと思いましたね。とにかく、社員の黒字化が早い。入社後3~4か月で、「キャッシュフロープラスになりますか?」って話です。僕のロジックだと1人粗利100万円で、キャッシュフロープラスなんですよ。給料なんか入れて大体100万円稼いでくれると、プラスになりますよね。

ネット広告は当時旬だったので、半年で100万いきました。キャッシュフローがプラスになるのが、入社後2年でプラスになるのと半年でなるのとでは会社の勢いが全然違うんです。8年目くらいに広告代理店にピポッドしたのですが、そこからは2億、5億、8億、13、18、20と一気に伸びていきましたね。今の投資でも、プロダクト型かどうかは見ています。

これからはドローンとAI

いま面白いと思うビジネスは何かありますか。

ドローンを使ったインフラの保守メンテナンスビジネスとかはポテンシャルのあるマーケットだと思っています。線路とか橋とかトンネルとかに、「ひびが入ってないか?」って人手でやるコストが高いですよね。人口が減っていく一方で、つくるものは増えています。それとドローンっていうと、普通はヘリコプターを思い浮かべるんですけど、車輪がついたのや、船もあって奥が深いんです。

あとは、AI×データなんかがいい気がします。個人的には、AIが与信のロジックに革命を起こすと考えています。この前、ケニアの金融業者が「スマホのデータでお金を貸します。」っていう事業をしている記事を読んで「天才だ!」って思いました。

スマホの一人あたりの通話時間から信用力を判断しているそうです。長い人には貸して短い人には、貸さない。人間関係を見ているそうです。こういうのは法人にもあると思いますよ。今までの人たちにはついていけないビジネスですから、ベンチャーにとってチャンスですよね。

AIって結局、統計と確率ですよね。これからの時代は、統計と確率を武器にして世の中を捉えることができる人が生き残る時代になっていくと思います。

他にも「この子、天才だな。」って思ったのが、マッチングアプリで画像を36分割して「いいね!」押すと、好みの相手が分かるアプリでした。僕みたいな文系の人間は、顔に統計学や確率を持ち込む発想が全く無かったので新鮮でした。

AIベンチャーは好きで、投資もしてます。もっともAIってとりあえす言ってるような人もいますけど(笑)。「それただのシステム開発じゃねえか!」って(笑)。あとはうちの業界のサブスクがまだまだ来るし、クラウドサービスもどんどん出てくるんじゃないですかね。投資は年3~4社にしていますし、これからもさらに増やしていきたいと思います。

内藤式発掘法

有望な投資先は、どうやって見つけるんですか。

ほとんど紹介ですね。若手の子たちからの紹介もあるし、友人経営者からもあるし、うちの社員からも。VCの方からとかもあります。
フェイスブックで非公開のグループをつくって、今メンバーが60人ぐらいいるんですね。3ヶ月に1回とかで、飲み会をやってます。若手の彼らが上場企業の社長たちと、少人数で飲むことって少ないですよね。僕は上場企業の社長30人くらいは友人・知人がいるので、彼らを囲んでの飲み会を企画したりしています。逆に上場経営者もスタートアップとの接点を持ちたがっています。

交流会は1年前から始めました。結局、ただ会うだけだと、それで終わっちゃうんですよね。1年後に連絡すると、怪しい人になっちゃう(笑)。フェイスブックで「飲み会やってます!」ってやってると、自然な感じで連絡とれるんです。飲み会の案内を流すだけで、ずっとつながってられるんで、「実は相談が…。」って向こうから来やすいんですよ。
営業と一緒で、ニーズが出るときって読めないじゃないですか。それが顕在化したときに連絡が来るかどうかは、直近で会ってるかどうかが大事ですよね。

今のスタートアップは、みんな経歴がきれいです。僕のときは、アウトローみたいな人が多かったですね。僕なんか完全アウトローでした(笑)。昔1~2年とかで会社辞めるって珍しかったですし、大学も普通のところを出てる人が多かったんです。でも今はうちの勉強会でも旧帝大早慶クラスが半分くらいいます。しかも、「前職トヨタにいました。」とか。もう毛色が違うっていうか(笑)。「時代が変わったな」って思います。

起業のために東大に入ったって子が増えてるんです。クレバーすぎて、話にもついて行けないですよ。一昨日も3~4人で飲んでて、「何でそのビジネス選んだの?」って聞くと、「このデータの取得で、今後の展開が容易になります。フロント商材として、今このビジネスやってます。」って、そんな感じです。データを握らないと、スケールしないのを知ってるんですよね。ここまで考えるのは、僕らには皆無でしたね(笑)。仲間ともしっかり議論して、成功率も上がってるように思います。

企業文化と人材はマネできない

成功したかのように見えて、伸びない会社もありますが。

ベンチャーの勉強会でもスケールするとき不可欠なのが、組織構築力が重要だとよく話します。ネット広告とかネットマーケティングとかって、20年前から絶対来るって分かってましたよね。多分2,3千人の起業家が入ってきたんじゃないでしょうか。でも100億超の会社って、15社ぐらいですよね。100億売るには、だいたい200人くらい必要です。200人の社員の会社を、なかなかつくれないんです。採用も定着も育成も上手くできない。ほとんどが30〜100人ぐらいで終わっちゃうんです。100人まで行く会社も少ない気がします。

採用、定着、育成の3つができる人はなかなかいないです。自分もめちゃくちゃ苦労しました。2億から20億に6年で成長して、社員も10人から60人って、どう見ても絶好調なのに、60人中15人が辞めちゃいましたから。「もう内藤についていけない。」って。その後、組織づくりを一生懸命やりました。

企業文化づくりは、なかなかまねできないです。楽天の三木谷さんもミッション・ビジョン・バリューってよく言いますが、明文化して組織に浸透させることは重要です。あとは採用ですね。採用に真剣に向き合ってる経営者は少ないですよ。ほとんどが、人事担当とかの人任せですね。面接大好きって社長を見たことがない。サイバーの藤田さんとか、リクルートの江副さんなんかは命かけてやってました。優秀な人材がカルチャーフィットすれば、スケールするのをわかってるんですね。

だから私も正直面倒でしたが、1次面接は全部自分でやってました。事業会社の社長のときは、かなりの時間を人事関係やってましたね。事業内容も大事ですが、簡単に模倣できる。基本ビジネスモデル自体は似たり寄ったりなのですが、人の部分は簡単にはまねできないものです。

大切なのはミッション

最後に、起業家として23年のキャリアから、起業を志す人にエールをいただきたいと思います。

今見ていて感じるのは、何のために起業するのかをはっきりさせないと、人が集まってこないってことです。「儲かるから一緒にやろうよ!」では、誰も寄ってこない。僕らのときは成金的な要素が確かにありました。しかし、最近は社会的使命、いわゆるミッションですね。「世の中に何を提供したいのか」を大事にした方がいいなと思います。うちもミッションを改めて問い直しています。私の場合はベンチャーの成長を助けるのがミッションです。社会をよくするのがベンチャーで、成長して、雇用を生んで、マーケットをつくるのがベンチャーの社会的使命だと思ってます。