1998年に、日本初のオンラインカウンセリングサービスを事業化したピースマインド株式会社を設立した荻原国啓さん。起業の経験を活かして、2016年からはゼロトゥワンでスタートアップ企業・起業家へのインキュベーション、投資などを行い、起業家・経営者の伴走者となっている。起業から現在まで、何を軸に事業を進めているのか。ご経歴や思いを伺った。

ゼロイチで事業を創る

起業家兼投資家として、具体的にどのようなことをされていますか?

1998年21歳のときに学生ベンチャーとしてピースマインドの前身となる会社を起業しました。それから、18年かけて、事業を生み出し、組織を作り、資本政策、経営統合、事業譲受といったことを経験してきました。スタートアップの様々な経営経験を経て、私はゼロイチで新規事業を生み出し成長させることが本当に好きなんだと実感しました。

自分の経験をベンチャーなどのさまざまな会社に役立てたいと思うようになり、2016年にゼロトゥワンという会社を新たに設立しました。

ゼロトゥワンでは、ゼロから新たな価値を創り出して社会に貢献すること、つまり、社会インパクトの創造を使命として、3つ領域へのサポートをしています。

1つ目は、起業前からの支援です。起業前の構想段階からライフタイムで起業家の伴走をしたり、エンジェル投資をしたりしています。対象は学生の方もシリアルのアントレプレナーの方もいらっしゃいます。プランの構想段階から相談に乗り、伴走をして、長期で関わっていく。これが、僕のライフワークですね。

2つ目は、PMF(プロダクトマーケットフィット)以降の組織課題、経営者チームの課題解決の支援です。プロダクトが固まったり、ローンチしたりした後に出てきた組織課題や経営課題について、僕の経験や知見を活かしてアドバイスしています。一緒に資本政策を考えたり、事業提携先を見つけたり、シードメインで投資したりすることもあります。

3つ目は、メガベンチャーや市場のリーダーになっているベンチャーの支援です。創業者が新規事業を創りたい時や、第2創業、第3創業期など事業の変化のプロセスで、壁打ち相手になったり、一緒に経営課題を解決したり、資本業務提携など様々な事業機会をコーディネートしたりと、経営チームとして関わっています。

僕は、大学卒業後に就職せずに、起業家として歩み出しました。この経験や知見の中にはスタートアップ経営にとって普遍的に活用できる要素がたくさんあるので、幅広い産業やサービスでもお役に立てると思っています。

また、もう1つ。SEA(ソーシャルアントレプレナーズアソシエーション)という社会起業家の支援組織と、ソーシャルベンチャーファンドも組成しました。こちらは、社会起業家や社会性の高い事業を作られた方に伴走と投資をするシステムです。

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社会に貢献した足跡を残したい

どうしてピースマインドを創業しようと思ったのですか?

ピースマインドは、メンタルヘルス不全を予防する社会インフラを作るために創業した会社です。体調を崩して会社をやめたり、休んだりする原因のほとんどが、メンタルヘルスの問題だと知り、なんとか解決する社会の仕組みを創りたいと思ったのがきっかけです。ストレスチェックが義務化される十数年前に事業を構築し、マーケットをリードしてきました。

事業を通じて、社会に貢献をした何らかの足跡を残したかったんです。学生の時にそういう生き方をすることだけは決めていたので、卒業までに自分のライフワークになるような、突き動かされる事業を発見したいと思っていました。

そんな時に、日本では交通事故の何倍もの人が自殺をしているということを知りました。自殺者が3万人を超した最初の年でした。日本が資本主義の経済大国であり続けながら、一人ひとりの心も豊かで健全でいられることを目指すビジネスとして、メンタルヘルス不全の予防をしなくてはと思いました。周囲の学生たちが大企業への入社を目指す中で、私は変態的な決断をしていましたね(笑)

違和感は時間では解決しない

起業して大変だったことを教えてください。

21歳で何の実績もない状態からのスタートでしたので、とにかくがむしゃらでした。

売上が立たない期間が続いて預金残高が尽きそうになってしまって、、資金調達に苦労したり、大変だったことを挙げればきりがありません。

全国の専門家に「こういうビジョンで、こういう社会課題を解決するサービスを作ろうと思っているので、一緒にやってくれませんか?」と電話やメールをしまくって、賛同して頂いたネットワークを作りました。また、「この仕組みは企業に必要だと思いませんか?」と大企業の人事部へ飛び込みでたくさん営業もしました。

20代前半での起業だったので、メンバーは自分より先輩ばかり。マネジメントはどうあるべきか?ということにも苦労しました。例えば、若さだけでグイグイコミュニケーションを取るのも、下手に出過ぎるもしっくりこなかったり、、今思えば些細なことにも一喜一憂しながら、自分の経営の在り方を模索し続けた時期がありました。

多くの企業と共通する点かもしれませんが、リーマンショックの時期も辛かったです。無条件で契約金が3〜4割減らされてしまったり。3〜4割減というのは、営業利益が10%や20%ある会社でもいきなり赤字に転落するレベルのインパクトですから未経験ゾーンでした。皆のおかげでなんとか乗り越えられました。

苦労を通して、学んだことはありますか?

経営者が違和感を感じるあらゆる事象は、時間の経過では解決できないということを学びました。

人の採用など、違和感に蓋をしたまま意思決定をすると、時間が経つにつれて、そのモヤモヤが広がっていくのです。

伴走する側にいると、早く向き合っておくべき違和感が見えてきます。ですから、起業家には「今直視するのは辛いと思うけれど、先延ばしにしても解決しないから今解決しよう」と課題に向き合うように伴走をしています。