1998年に、日本初のオンラインカウンセリングサービスを事業化したピースマインド株式会社を設立した荻原国啓さん。起業の経験を活かして、2016年からはゼロトゥワンでスタートアップ企業・起業家へのインキュベーション、投資などを行い、起業家・経営者の伴走者となっている。前回の記事に続き、起業から現在まで、何を軸に事業を進めているのか。ご経歴や思いを伺った。

人物を重視し、社会性のある事業へサポート

どんな起業家であれば、投資をしたいと思いますか?

これまで十数社投資をしてきました。共通するのは、起業家の人物を重視していること、事業を通じて社会課題を解決したいと思いを持っいる起業家であることです。そういう意味では、事業に社会性があり、そこになんらかの熱い想いや当事者意識を持っている方に魅力を感じますね。

投資を決めるのは、僕が応援したいと思うことに加えて、シンプルに僕の支援により会社が成長すると思えることを重視してます。

対象とする業種は広くて、支援先のアグリゲートさんは農業、Bipseeさんは医療VR、ADDressさんはシェアリングエコノミーと多岐にわたります。Cronoさんは奨学金を企業が負担する仕組みを、YOUTURNさんは都内での優秀な人材を地方創生に役立てる仕組みを作っていて、どれも社会性の高いビジネスだと思って応援しています。

支援先の中で特に印象に残っている企業はありますか?

アグリゲート創業者の左今克憲さんは、学生の時から知っている起業家です。リープラさん、JAさん、三井物産さん等と資本業務提携するなど、現在は拡大フェーズに入って頑張っていて、とても感慨深いですね。

左今さんは、農業大学の学生の時から「起業したい」と言って、僕をノックしてきてくれたんです。その時から応援し続けてます。

飲食店などの受発注ツールをスマートフォンで提供して、中小企業の生産性を上げることに貢献しているハイドアウトクラブさんもご縁が長いです。創業者の田口さんは、僕が経営していたピースマインドのインターン生でした。すごく優秀で、新卒で楽天、その後リクルートに行ってから、起業する前に相談を受けました。その後、イニシャル投資をさせてもらいました。

田口さんは、ウィスキーが好きで、飲んだ世界のウィスキーを記録できるコミュニティアプリを作っていました。僕が最初に投資したのも高いウィスキーをボトルシェアする事業でした。しかし、飲食店を回っていくうちに、受発注の不便さに気がついた。それを解消するために、ピボットして受発注ツールという経営支援サービスを始めたのです。行動力と根気のある起業家です。

教育の格差問題に対して挑戦する機会を提供しているCronoさんは、高い社会性に投資しています。創業者の高さんも奨学金で大学に入っていて、金銭的な理由で留学を断念した経験があります。そのため、自分と同じような人をなくしたいという思いをお持ちなのです。ビジネスの構想段階から入って、ファジーな計画からブラッシュアップしてローンチしました。事業を一緒に作っています。僕と家入さんが取締役として入って応援しています。

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辛い時にほど手を差し伸べたい

なぜシード・プレシードにこだわっているのでしょうか。

僕の起業経験から振り返ると、B/SやP/Lが綺麗になってからだと、みんな投資してくれるのですが、実際は綺麗になる前が会社として辛いタイミングです。当然リスクが高いところに支援する人は少ないのですが、僕が自分なりにチャンスと可能性を感じることができる事業と起業家であれば、投資をして応援していきたいと思っています。そういう意味でシードの投資にこだわっています。

最近は、僕と知り合う前に資本政策に行き詰まってしまい、「どうしたらいいでしょうか?」と相談されるケースも増えました。

株の過半数を明け渡してしまっているケースもあれば、「このラウンドではシェア○%まで」というセオリーに忠実すぎたり、企業評価が高すぎるために投資機会を失っているケースも見受けられます。

そういう相談を受けると、「1年前に知り合って助言できていたら、違う景色があったかもしれないな」と残念な気持ちと自分の力不足を感じます。P/Lを不必要に痛めてしまった後だと、資金調達の難易度が上がってしまうからです。もちろん、その状態でも何かお手伝いできることがあれば最善を尽くします。難しい領域ですが、チャレンジし続けたいですね。

社会性と事業性の高度なバランスをとる

ベンチャー支援のノウハウはお持ちですか?

ベンチャー経営で発生しうる一通りの事態に起業家として向き合った経験があるので、基本、あらゆる経営課題に伴走支援しています。人まわり、組織まわりのお手伝いも多いです。人材、提携先、機関投資家、VCとの連携など、必要なリソースをコーディネートすることも多いです。

あとは、起業家の方が、社会性と事業性の両立で葛藤したときに、その起業家が悩むポイントを臨場感持って理解しつつ、やるべきことを整理するお手伝いもします。客観的にバランスを欠いている場合は、軌道修正をサポートしますね。

また、初期フェーズで企業に発信力が課題のケースもあります。その場合には、提案営業のプロセス整理や、資料ブラッシュアップを一緒に考えたりしています。広報戦略として一緒にプレスリリースを作って、メディアに発信することもします。

経営資源で足りないところを、僕を使って補って欲しいと思っています。

起業家や起業をする人へのメッセージをお願いします。

僕は、起業家の気持ちに寄り添うタイプの「投資もやる伴走起業家」だと思うので、こうしたタイプを求めている起業家にはマッチすると思います。利害関係者というよりは、一緒に考えて伴走することを大事にしています。

ビジネスにするには難易度の高いと言われ続けた事業を形にして市場を作ってきたので、僕の知見が活きる社会性の高い事業だと相性がいいと考えています。