事業開発を先導して学んだ0→1の過酷さ。起業家の近くで寄り添う投資家として。(後編)
「自己実現のためにがむしゃらに突き進んでほしい」と起業家に熱いメッセージを送るのは、ベンチャーユナイテッド株式会社で投資家として活躍する植 雄平さん。投資家としてのキャリアを歩む前は、株式会社ネットエイジグループ(現 ユナイテッド株式会社)でメディア事業からアドプラットフォーム事業まで幅広い事業を手がけてきた。自身が責任者として組織を牽引してきた経験から、事業をグロースさせることの楽しさも、難しさも熟知している。前回に引き続き、そんな植さんのこれまでのキャリアから、投資家としてのスタンスまで様々なお話を伺った。
目次
1つのサービスに100%を捧げるエンジニアの存在
事業を自ら先導する立場から、これから事業を作っていく起業家を支える投資家という職業に転身した植さんですが、投資家として投資をする際に重要視するポイントについて教えてください。
どの投資家の皆さんも同じだと思いますが、まず、スタートアップの参入するマーケットの大きさ、タイミング、競合状況は投資判断にあたり重要視します。それに付随して、ターゲットマーケットの中にいる顕在的/潜在的な顧客数を必ずリサーチします。マーケットの規模が大きく、十分な顧客数があれば、自然と成長速度も上がります。
その他に見るポイントとしては、組織の中にコミットのエンジニアがいるかどうかです。コミットのエンジニアというのは、一つのサービスに100%全ての意識を捧げてくれるエンジニアを指しています。CEOがビジネス全体に100%の意識をコミットするのであれば、CTOは100%開発部分に意識をコミットするというイメージです、CTOというポジションではなくても、エンジニアとして100%全力でコミットしてくれるメンバーがいるかが重要で、サービスの開発 / 改修スピードが事業成長にダイレクトに直結すると考えています。外注というスタンスでも勿論問題はないです。
しかし、スピード感を持ってゼロベースから事業を推進するためにもコミットのエンジニアが望ましいと思っています。あくまで、実装をしてサービスを作るのはエンジニアです、ユーザーの意見を取り入れて改修するその改修作業もエンジニアが対応する場合がほとんどだと思います。サービスを作る上で必要不可欠であるエンジニアが組織の中にいることでダイレクトに意思疎通ができるので、事業にスピード感が生まれます。もちろん企画 / セールス / バックオフィスも非常に重要でエンジニア以外は気にしないという訳ではありません(前提チームとして投資検討はします)、ただ、投資フェーズとしてシード / アーリーフェーズの場合は特に重要であると思います。サービス志向性の強いエンジニアになってくるとサービスの状況を深く認識 / 理解しているので、ビジネス側が欲していることに対して適切な提案をくれますので、超心強いです、賢者ですね(笑)、だから僕はコミットのエンジニアがいるかどうかは結構みてしまいますね。
経営者の人間性、事業に向き合う姿勢に惹かれる
上述の判断基準を基にこれまでにいくつかスタートアップに投資されてきたと思いますが、実際の投資エピソードについても伺いたいです。
最近だと、株式会社Graciaさんと株式会社Spiceさんの投資をさせて頂きました。まず、Graciaさんは「TANP」という「ギフトプラットフォームサービス」を運営していて、モノを所有することに価値を見出す「モノ消費」から、商品やサービスを購入したことで得られる一連の体験に価値を見出す「コト消費」へと転換するトレンドをおさえている点で非常に魅力的なテーマをもったスタートアップだと感じ惹かれました。ECマーケットは確実に大きくなることが予想される中で、最近だと海外で特化型のECを運営している企業が大きく成長しています。こういったマーケットの流れを考慮しても、手応えのあるマーケットで勝負していることは間違いないと思います。
それに加えて経営陣の事業への情熱も素晴らしいです。初めてお会いした際に、その当時はまだ大学に在籍していたのですが、「学生でもここまでパワーを感じるんだ」と衝撃を受けました。代表の斎藤さんが強い意志を持って事業に向き合う姿勢をみて応援したくなったことも覚えています。こういったマーケットだけでなく、経営チームの人間性や事業への情熱、そして強みを持ったチームであったので投資させて頂きました。
もう一社が、株式会社Spiceさんで、出品代行サービス「トリクル」を運営していて、「たくさんのモノをまとめて一度で売っちゃいたい」、「不要な物はあるけど梱包や配送に時間がかかって売るのがめんどくさい」などのペインポイントに対して、スタッフが直接取りに来て、委託の形で販売もしてくれるという、顧客からすると本当にかゆいところに手が届くサービスとなっています。二次流通マーケットが非常に大きくなってきている中で、待ち望まれていたサービスだと思いましたし、とても将来性を感じました。
そして、社長の徳泉さんはエンジニアのバックグラウンドに加えて、ビジネスサイドの知見も持ち合わせています。コミュニケーションを重ねると、彼のクリエイティブ思考な部分はもちろん、自分の芯をしっかりと持って事業を推進する人間性が伝わってきて、是非応援したいと思ったんです。ユーザー目線でのソリューション&マーケットの選定と社長の人間性に魅力を感じて株式会社Spiceさんへの投資をさせていただきました。
各々の夢の実現に向かって突き進んで欲しい
最後に起業家の方にメッセージをお願いします。
色んな悩みを抱えながらも自身の事業の成長と、夢の実現に向き合う起業家の方々を尊敬します。だからこそ、夢の実現に向かって突き進んで欲しいです。そして、夢の実現のために事業を推進する過程でハードルが課されても、前向きな気持ちでお互いに頑張りたいです。ただがむしゃらに頑張ったとしても、自身のメンタルケア、フィジカルケアは忘れないようにできればいいですね、数年だけスタートアップすればいいとかではないと思いますし、長い人生を共に歩んでいく中で、何より「元気」に刺激を与え合いたいって思ってます。
僕自身は、起業家のみなさんと一緒に未来を描く協力者でいたいと思っています。より身近な存在として、起業家に近い立場で寄り添うことができれば、それが一番理想的です。もちろん、身近な存在として信頼してもらうためのサポートもさせていただきます。上述した通り、僕がお手伝いできる範囲内であれば、どんなことでもやらせていただきます。これまで、事業を作ってきた際に培ってきたマーケティング知見や人的ネットワークなど惜しみなく提供させていただきます。なんでも相談に来てくれると嬉しいですね。