『資金調達の舞台裏』 D Technologies 福田氏×East Ventures 金子氏

2020.02.21

べンチャー企業の急成長に必要不可欠である資金調達、起業家と投資家、メディアでは決して多く語られない「投資までのストーリー」。スタートアップ資金調達の舞台裏に迫ります。

1.  資金調達に向けて、お互いの第一印象とは?

田原彩香氏(以下、田原):この番組は投資家プロフィールサイトの「バンドオブベンチャーズ」と「East Ventures」がお送りいたします。

べンチャー企業の急成長に必要不可欠である資金調達、起業家と投資家、メディアでは決して多く語られない「投資までのストーリー」。スタートアップ資金調達の舞台裏に迫ります。

本日お越しいただきましたのは、D Technologies代表の福田様、そしてEast Venturesの金子様です。パーソナリティはビジネスタレントの田原が渋谷道玄坂スタジオからお送りします。ようこそお越しいただきました。

金子剛士氏(以下、金子):日本国内とインドネシアを中心としたASEAN諸国に投資をしている、East VenturesというベンチャーキャピタルでITスタートアップのシード投資を行っている金子と申します。

福田涼介氏(以下、ゆずしお):D Technologiesの代表の、福田と申します。エンジニアがいなくてもソフトウェアを開発できるAppifyというサービスを運営していて、2018年に起業したタイミングでEastVenturesさんに出資をしていただきました。

田原:福田さんにはあだ名があるんですよね?

ゆずしお:そうですね。界隈では「ゆずしお」って呼ばれてます。気軽にゆずしおって呼んでください。

田原:わかりました。ゆずしおさん、よろしくお願い致します。

本日は資金調達の舞台裏ということで、普段メディアでは語らないことをギリギリまで語って頂きたいと思います。

それではまず聞いていきたいのですが、お二人が初めてお会いしたのはいつ頃でしょうか?

金子:まず、2015年か2016年の、ゆずしおがどこかのハッカソンに出ていた時だったと思うんですが、East Venturesパートナーの松山太河が、ゆずしおというエンジニアとして優秀な若者がいるとTweetしていて、その時から存在は知っていました。初めてお会いしたのは、投資先のPopshootという会社の大山さんが主催する飲み会です。Canalというサービスをやっている福村さんも含めて4人で同席しました。

ゆずしお:その飲み会で、一緒に酔ったのが最初の出会いでしたね(笑)。

金子:実は、そこで同席した全員にEast Venturesから出資させていただいていて、現在は同じシェアオフィスに3社とも同居しています。

田原:どこでどうビジネスが繋がるかって分からないものですね。ゆずしおさんはその飲み会にどんなテンションで参加されたんですか?

ゆずしお:あの時は確か僕がプライベートが不調で、大山さんのPopshootを手伝っていたという経緯もあって飲みに誘われまして、金子さんに初めてお会いしたって感じですね。

金子:僕も元々ゆずしおのことは知っていたので、会うのがとても楽しみでしたね。でも、プライベートな話ばっかりしてて(笑)。当時彼女に振られたばかりですごく落ち込んでいたので、メンタルが弱いのかなという印象でしたね。

田原:そこで仲良くなって、ビジネスでも繋がり、出資もしてもらったと。

ゆずしお:その時から、起業する予定だということは話していて、この飲み会が出資のきっかけになりましたね。

田原:金子さんの第一印象はいかがでしたか?

ゆずしお:僕はSNSでしか知らなかったので、怖い人なのかなと思っていましたが、めちゃめちゃお酒を飲む良い人でした(笑)。

田原:そこから2018年の7月に実際に起業して、East Venturesから出資を受けたということでしたが、初めての出会いからすぐですよね。どうやって出資は受けたんですか?

ゆずしお:その会以降も僕と金子さんの個人的な繋がりは続いてて、一緒に起業した人が元々East Venturesでインターンしていたということもあって2人で金子さんに頼りました。

金子:そのミーティングの直前に、あるエンジェル投資家の方からすごいバリュエーションでの出資が既に決まっているという話を噂で聞きまして、かなり構えてミーティングに臨みました。

ゆずしお:それはただの噂なんですけどね。何かのネタで言ってたのかもしれないです。僕も今はじめて知りましたから(笑)。

田原:ゆずしおさんとしては始めからEast Venturesに出資してもらいたいという気持ちはあったんですか?

ゆずしお:そうですね。East Ventures一本狙いで行きつつ、他の方ともお話させていただいて、っていう体で対応しましたね。実際には誰ともそんな話してなかったんですが。

田原:誰にも掛け合ってないから、御社でお願いしたいとはっきり言った方がいい気もするんですが、実際にはどうなんでしょうか?

金子:実際は一回のミーティングでスムーズに決まりましたね。オファーの後、すぐ回答をもらえました。

ゆずしお:最初は3人でミーティングしていましたが、途中からEast Venturesパートナーの太河さんもミーティングに加わって、金子さんは今シリーズAに達しているスタートアップにだいたい出資してるからオススメだよって言って去っていきました。

金子:あったあった。思い出してきた(笑)。

田原:なかなか面白い話も聴けました。この後も色々聞いていきたいと思います。

2. 10回ものピボット!Appify誕生の裏側とは

田原:Appifyというサービスについてですが、エンジニアがいなくてもソフトウェア開発ができるということで、非常に画期的なサービスだと思うんですが、実際どういうことなんですか?

ゆずしお:業務委託とかだとエンジニアを会社に抱えずに外部に委託して開発してもらうと思うんですけど、Appifyの場合、エンジニアがコードを書かずにソフトウェア開発を行うことができる、コンポーネント開発という手法をとっています。全てのソフトウェアはコンポーネントの組み合わせによって成り立っており、既に書かれたコンポーネントを組み合わせることでソフトウェアを可能な限り自動で生成する、ということをコンセプトとしています。今まではエンジニアのチームが数ヶ月かけて開発していたものを、8割くらいまで自動で生成して最後の仕上げを人間が行う、ということが可能になります。そのため、委託側はエンジニアを抱える必要がなくコストの削減ができ、かつスケールが利くため同時開発ができるようになり、また一度開発したコンポーネントは再利用できるので、どんどん効率を上げて開発できるというメリットがあります。

田原:エンジニアを採用するとなると、結構コストがかかりますもんね。

ゆずしお:ここ最近エンジニアの給料は上がってきていて、ソフトウェアを開発するのにもかなりのコストがかかると思います。5年前に作ったソフトウェアを今作ろうとするとおそらく倍くらいかかるんじゃないですかね。Appifyはそういう状況に対して新しい選択肢になると思っています。

金子:ゆずしおはエンジニアの先輩や友達がとても多く、会う人会う人から好かれていたので経営者としても求心力が高いな、という印象を持っていました。今も、どんな企業でも通用する優秀なメンバーを率いているのですが、彼らは、ゆずしおとなら一緒に働きたいということで集まったそうです。

それとエンジニアネットワークの中で存在感があった話で言うと、彼は当時エンジニアの転職支援をやっていて、とても良い条件で何人ものエンジニアを転職させていました。今でこそ人件費を下げるためのサービスを展開していますが、当時は逆で、実はエンジニアの人件費を上げていた張本人なんですよね(笑)。

ゆずしお:当時は僕もエンジニアで、給料が高いのに越したことはないし、周りの優秀なエンジニアが不利な条件で雇用されているのに対して異議を唱えていました。今は逆に能力の良し悪しに関わらず給料の水準が高くなってきていて、そこは違うんじゃないかな、と思っています。

田原:実際にエンジニアの方を仲介する際に、どのくらいの条件で仲介していたんですか?

金子:新卒で1000万の採用とかをバンバン決めていて、採用競合した投資先から愚痴を言われたこともありましたね(笑)。ゆずしおがうるさいみたいな(笑)。

田原:1000万ですか!愚痴を言われるくらいかなり粘って交渉したんですね(笑)

話を戻すと、Appifyは非常に画期的なサービスだと思うんですが、起業した当初からAppifyというサービスの構想があったんですか?

金子:いや、今の事業は10個目くらいですよね?

ゆずしお:そうですね。起業してから色々試して、最終的にたどり着いたのがAppifyでしたね。

田原:2018年に起業してからまだそんなに時間は経ってないのに、すごいサイクルでピボットしてませんか?

ゆずしお:最初はブロックチェーンをメインにやっていました。、その後C向けサービスにピボットしてずっとやっていたんですが、全然上手く行きませんでしたね。

田原:どこで上手く行かないって判断して、次に行くんですか?

ゆずしお:一ヶ月とかの早い段階で感覚的に将来性がないな、と感じたらすぐ止めて、すぐ次のビジネスに行ってましたね。

田原:すごい速さで次のアプリを作っていたと思うのですが、アプリを作ること自体に時間がかかるんじゃないですか?

ゆずしお:それがAppifyの元になっています。、C向けのサービスをヒットさせるのに苦労していたのですが、やはり難易度が高いので手数を打たないといけないと考えるようになりました。手数を打つにはできるだけ早くアイディアを形にするための環境が必要で、そこで社内の技術力が活きてきたって感じですね。

田原:今までのビジネスで作ってきたものが、Appifyに繋がったっていうことですね。

金子:社内ツールを磨き込んだ結果、それを外部に提供できるようになったって感じですよね。

ゆずしお:ツールは元々社内でしか使えないものだったのですが、コンセプトとしてものすごく良いんじゃないかと思い始めたので、Appifyが生まれました。

金子:本当にテクノロジーに関係ない事業をたくさんやっていて、例えばストッキングのD2Cとかやってましたもんね(笑)。テクノロジーの無駄遣いとか言われてましたね(笑)。

田原:そういうビジネスの話を聞いて金子さんはどう思われたんですか?

金子:そういった事業の一つ一つが今のAppifyというサービスに直接生きているので、その試行錯誤は無駄じゃなかったと思いますね。

田原:これから変わることはないですか?

ゆずしお:ないですね。

金子:信じていいんですかね(笑)。

田原:リリースもされたということで、これから突き進んでいきたいですね。これまで色んな人の話を聞いてきましたが、ピボットを10回くらいしているのはあまりないパターンですよね。

ゆずしお:多くの人が途中で挫折しがちだと思うんですけど、意外とその辺気にしないタイプなので何とかなりましたね。

田原:わかりました。この後はそういった挫折を乗り越える方法とかもぜひお聞きしたいですね。

3. 多くの失敗を乗り越えたゆずしお、そしてAppifyの魅力とは?

田原:先程、10個くらい事業を経験して、最終的に今にたどり着いてるというお話がありましたが、事業をやって失敗して次の事業に取り掛かるのってメンタルは辛くないですか?

ゆずしお:僕はあまり失敗を気にしないタイプなので大丈夫でしたが、周りの起業家の話を聞いていると数回のピボットでネガティブになってしまう方が多いみたいです。

金子:ピボットを何度も繰り返すと社長の求心力がなくなって組織が崩壊することがよくあるのですが、そいういうことが起きずに安定したメンバーで淡々とやれているのはゆずしおのすごいところだと思いますね。

ゆずしお:息をするようにようにピボットしてますもんね(笑)。

田原:最初は彼女に振られた話でメンタルが弱いのかなと思いましたが、ビジネスでは平気なようで安心しました(笑)。

一同:(笑)

田原:Appifyのα版が2019年の12月にリリースされたということですが、実際にどういった企業さんに使っていただくことが多いですか?

ゆずしお:リリース後何社か個別対応させていただいたんですが、金融系の会社から、スタートアップから、既に上場しているIT系の会社であったり、全くITには関係のない著名人の方であったりと、幅広く使っていただけてますね。

田原:どんな企業にもマッチするんですね。

ゆずしお:会社に既に開発力があるのであれば自社で開発したほうが良いと思うのですが、開発力がない会社でエンジニアを増やしたくないと考えている企業にはもってこいのサービスだと思います。他にもITに詳しくはないが、サービスを作りたいと考えている方にも使って頂きたいですね。

田原:これからどういった支援をEast Venturesさんにお願いしたいとかありますか?

ゆずしお:ファイナンスの手伝いをお願いしたいですね、金子さんは調達力があると聞いているので(笑)。

金子:頑張ります(笑)。

田原:Appifyのサービスを使いたいっていう企業はたくさんあると思うので、そういう会社さんを紹介してもらったり、とかもできそうですよね。

ゆずしお:顧客紹介の面でも、East VenturesのLPなどは、密にコミュニケーションをとっていると思うので、そこで話してほしいですね(笑)。

金子:実はもう何社かクライアント候補の企業さんを紹介させてもらっており、受注も決まっています。

ゆずしお:他のSIerに頼むと、時間が3倍-4倍かかって、コストも10倍くらいかかるそうなのですが、Appifyを使えば改善される、という状況で。

金子:実は後にその企業から、「あんなに良い会社はなかなかない、D Technologiesに初期に投資しているEast VenturesはすごいVCだと思うからファンドにも出資したい」というコメントがありました。ゆずしおはファンドレイズまでしてくれる投資先という、ありがたい存在ですね。

田原:ファンドレイズまでとはすごいですね。お二人のタッグでどんどん成長していってほしいですね。

色々聞いてきて、そろそろまとめて行きたいと思うんですが、ゆずしおさんから何か告知はありますか?

ゆずしお:直近はAppifyのα版をリリースして、数社さんだけ限定公開して1on1でお話してプロダクトの開発を進めていたのですが、3月2日にβ版をリリースする予定です。β版では、利用していただける会社さんを数十社ほどに引き上げたいと思っています。アプリをライトに作ってリリースしたいという会社様がいらっしゃればお声がけ頂ければ、と思っております。

田原:β版が出るということは、今大変お忙しい時期ですよね。そんな中ラジオにお越しいただいて、ありがとうございます。

バンドオブベンチャーズに掲載希望の投資家の方、そしてラジオご出演希望の方はお問い合わせください。また、バンドオブベンチャーズは財務戦略や管理業務に課題を抱えるスタートアップへのアドバイスもしております。気になった方は、ホームページをband.ventures、またはバンドオブベンチャーズで検索し、ご連絡ください。皆様ご連絡お待ちしております。

今日は資金調達の舞台裏ということで、なかなかメディアでは言えないことを今日は語って頂いたと思うんですけれども、いかがでしたか?

金子:すごく楽しかったです。ゆずしおと資金調達のミーティングを一番最初にしたときに1つ忘れられない話があって、EV投資先で上場した某大手企業の当時の時価総額約7000億を超える、ってことを出資が決まった際に宣言してくれました。時々リマインドしてプレッシャーかけていきたいと思います。

田原:それが出資の決め手になったかもしれないってことですもんね。

ゆずしお:すごいこと言ってましたね(笑)。

金子:目標としては売上800億くらい?

ゆずしお:必要ですね。10年以内に頑張りたいですね。時価総額が1000億くらいになった時に、あと7倍ですね、っていうのが楽しみです。早く言いたいです。

田原:そうやって思うと、やるべきことがたくさんありますね。これからもお二人のタッグを応援しています。

さて、本日お越しいただきましたのは、D Technologies代表の福田様、そしてEast Venturesの金子様です。パーソナリティはビジネスタレントの田原でした。

資金調達の舞台裏、次回もお楽しみに!